研究課題
一般に加齢に伴う疾患の増悪には、「細胞老化」が関与しており、ヒトの歯周組織においても加齢に伴い老化細胞の蓄積が観察されている。従って、高齢者における歯周組織の修復、治癒、再生能力の低下には、細胞老化を病因とする慢性炎症と幹細胞の機能低下、すなわち、幹細胞老化(ステムセルエイジング)の関与が示唆される。歯周組織に特徴的な組織修復・再生能の低下や治癒遷延化の分子機構を明らかにする為に、エピジェネティックなメカニズムにより慢性疾患や癌病態と個体発生を制御するmicroRNAs(miRNAs)に着目した。研究代表者らは、老化歯根膜細胞におけるmiRNA-34aの発現亢進を見出し、その標的遺伝子であるSATB2(硬組織形成を促進する遺伝子)に焦点をあて解析に取り組んでいる。研究開始初年度の平成30年は、老化歯根膜細胞において発現亢進するmiRNA-34aとSATB2の幹細胞性の制御機構をヒト歯根膜細胞のin vitro 複製老化過程において検討した。老化歯根膜細胞において、miR-34aの発現亢進とSATB2の発現低下が遺伝子、タンパクレベルで認められた。実際に、miR-34aを遺伝子導入した細胞株ではSATB2のタンパク発現が低下していたことから、老化歯根膜細胞においてmiR-34aがSATB2を調節制御し、細胞分裂に関与していることが示唆された。またmiR-34aを遺伝子導入した細胞株、SATB2を欠失させた細胞株において硬組織分化誘導培養を行なった結果、両者とも石灰化関連遺伝子の発現は減少していたことから、miR-34a-SATB2経路が歯根膜細胞の複製能・分化能に大きな影響を及ぼす可能性が示唆された。平成31年は、生体での歯周組織の老化と幹細胞能を検討する為に、老齢マウスの歯周病細菌非感染による歯周炎モデルを作成し、in vivo解析を実施した。
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