研究課題
【目的】先行研究で、脂肪細胞-マクロファージ共培養系をLPS刺激した際に脂肪細胞で発現変動を示すmicro (mi) RNAのスクリーニングを行った。その中に炎症制御に関与するmiR-146a-5pが含まれていた。炎症状態でのmiR-146a-5p発現誘導については、脂肪・歯周両組織で報告があるものの、実際の炎症抑制効果については明らかではない。そこで、脂肪・歯周組織におけるmiR-146a-5pによる抗炎症効果を検討した。【材料と方法】LPS刺激下でマクロファージと共培養した脂肪細胞または歯肉線維芽細胞におけるmiR-146a-5p発現量および各々の細胞の単独培養群における発現量を定量した。また、共培養群や単独培養群にmiR-146a-5pを導入した際のサイトカイン遺伝子発現やタンパク発現の変動を測定した。さらに、マウス尾静脈よりmiR-146a-5pを投与した際の脂肪・歯周組織の炎症抑制効果について検討した。【結果】LPS刺激下でマクロファージと共培養すると、脂肪細胞および歯肉線維芽細胞からのmiR-146a-5pの発現が亢進し、単独培養群ではマクロファージにおいてmiR-146a-5pは発現が亢進した。また、これらの細胞にmiR-146a-5pを導入すると、サイトカイン発現が抑制された。さらに、マウス尾静脈から投与すると、食事誘発性肥満が軽減し、脂肪・歯周組織における炎症性サイトカイン発現も抑制された。【考察および結論】TNF-α中和抗体添加によりサイトカイン産生が抑制されるという過去の結果から、今回用いた共培養系においてもmiR-146a-5pがマクロファージからのTNF-α発現を抑制し、結果的に炎症抑制につながったと考える。miR-146a-5pは肥満糖尿病などにおいて脂肪・歯周組織の炎症に共通の制御因子として働く可能性がある。
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