研究実績の概要 |
生体内には増殖することなく破骨細胞に分化しうる細胞休止期の破骨細胞前駆細胞 (QOP )が存在しており(Mizoguchi T, J Cell Biol, 2009 )、これは歯周炎にも関与することが示唆されている (Lee DE, J Periodontal Res, 2015 )。また歯根膜細胞は恒常的に破骨細胞分化 因子(RANKL )を発現していることから、歯根膜にはRANKL 刺激を受けた破骨細胞前駆細胞が存在していると考えられる。外傷性咬合による歯槽骨吸収にもQOP やRANKL 前刺激を受けた破骨細胞前駆細胞が関与しているのではないかと考えた。今回の研究の目的では外傷性咬合による破骨細胞形成におけるQOPの関与を検討した。 8週齢のCB-17マウスの上顎左側第一臼歯咬合面にステンレスワイヤーをスーパーボンドにて装着し,マウス咬合性外傷モデルを作製した。歯槽骨吸収へのQOP の関与を検討するため,ワイヤー装着直前にBrdU溶液をマウスに腹腔内投与した。ワイヤー装着後0,1,2,3,5 日目に屠殺し,下顎第一臼歯を摘出し,根分岐部が観察できるように組織切片を作製して,HE染色および酒石酸耐性酸ホスファターゼ(TRAP)染色,BrdU免疫染色を行った。 【結果】マウス第一臼歯に外傷性咬合を加えると,2日目に根分岐部歯根膜組織が硝子変性し,3日目には,根管中隔に穿下性の骨吸収が起こった。1-3日目には,根分岐部のTRAP陽性細胞は、BrdU陰性であった。5日目にはTRAP陽性の細胞中,約15%がBrdU陽性であった。 【結論】穿下性の骨吸収が起こる3日目までは、QOPが関与することが示された。
|