研究実績の概要 |
目的:細胞周期が静止期で停止した破骨細胞前駆細胞(QOP)が存在していることが報告されている (J Cell Biol, 2009) 。本研究の目的は,外傷性咬合による歯槽骨吸収におけるQOPの役割を検討することである。 材料および方法:マウスの上顎左側第一臼歯咬合面にステンレスワイヤーを装着し,下顎左側第一臼歯に咬合性外傷を誘導した。マウスに腹腔内にbromodeoxyuridine (BrdU)を投与し,分裂中の細胞にBrdUを取り込ませた。酒石酸耐性酸ホスファターゼ(TRAP)染色を行った後,TRAP陽性細胞およびBrdU陽性細胞を計測し,TRAP陽性かつBrdU陰性の細胞をQOPとして計測した。 結果:マウス外傷性咬合により形成される破骨細胞でのQOP の関与を検討するため、BrdU 溶液を8週齢のCB-17マウスに腹腔内投与した。BrdU はDNA 前駆体の一つであるチミジンの類似物で、DNA 合成期のS 期に取り込まれる。静止期の細胞であるQOP はBrdU を取り込まないことを利用してQOP の関与を検討した。そしてマウスの上顎左側第一大臼歯咬合面に直径0.4mm、1mmのステンレスワイヤーをスーパーボンドにて装着した。その後0, 1, 2, 3, 4, 5 日に屠殺、下顎第一大臼歯を摘出して根分岐部が観察できるように組織切片を作製して、骨吸収状態を病理組織学的に、また、破骨細胞の核内のBrdU 陽性あるいは陰性を確認した。マウス臼歯に過剰な咬合圧をかけると根分岐部歯根膜組織が二日目には硝子変性し、三日目には、根管中隔に穿下性の骨吸収が起こった。一日目には、根分岐部にわずかな数のTRAP陽性細胞、BrdU陰性の細胞を認めたが、五日目にはTRAP陽性、BrdU陽性の細胞が確認できた。
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