歯周組織再生の際、歯肉のダウングロースが起こり歯根膜の再生が困難であるため、歯肉上皮の成長を抑制し、さらに歯根膜の再生を促す方法の確立が待望されている。創傷治癒、細胞外マトリックスのリモデリングの際、細胞が仮足形成することが重要な役割を担っている。私たちは、以前、PDZ-LIM ファミリーに属しているPDLIM5が、マウス線維芽細胞の仮足形成に関与する可能性があることを報告している。本研究では、ヒト歯根膜および歯肉上皮細胞において、PDLIM5が仮足形成、細胞走化性に及ぼす影響について検討を行った。 解析は、CRISPR-cas9、siRNAを使用した実験を並行して行うこととした。CRISPR-cas9での実験も進行中であるが、siRNAを使用した実験結果をもとに詳述する。細胞は、SV40T-AgおよびHTERTにて不死化されたヒト歯根膜細胞株(1-11)、SV40T-Agにて不死化されたヒト歯肉上皮細胞株(OBA-9)を使用した。2種類のsiRNAにてPDLIM5をノックダウンさせた1-11およびOBA-9を使用し、以下の実験を行った。細胞をフローティングコラーゲンゲル上で培養後、仮足形成の評価を行った。細胞をセルカルチャーインサートに播種後、インサート下面の細胞数を計測し、細胞走化性を評価した。 2種類のsiRNAにてPDLIM5がノックダウンされた1-11において、仮足形成の数、長さならびに細胞走化性が、コントロールと比較し、有意に減少した。OBA-9においては、仮足形成の数、長さならびに細胞走化性が、コントロールと比較し、有意に促進された。 本研究の結果から、PDLIM5は、細胞の仮足形成、細胞走化性に対し、歯根膜細胞においては促進に働き、歯肉上皮細胞においては抑制に働くことが推察された。PDLIM5は歯周組織再生を誘導する可能性のひとつとして示唆された。
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