研究課題/領域番号 |
18K17074
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研究機関 | 北海道医療大学 |
研究代表者 |
清水 伸太郎 北海道医療大学, 歯学部, 助教 (80734235)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 歯学 / 遺伝子 / 歯周病 |
研究実績の概要 |
歯周炎関連遺伝子を同定するためのゲノムワイド関連解析(GWAS)を行い、歯周炎関連遺伝子としてGPR141(Gタンパク共益受容体141)を報告した。GPR141は、後に行われた韓国人を対象としたGWASで、比較的強いシグナルを示し、アジア人特有の歯周炎関連遺伝子である可能性が示唆された。本研究はオーファン受容体であるGPR141のリガンドや転写調整因子を調べることで機能解析を進めることである。 興味深い事にGPR141と喫煙歴の間にG-E interactionを認めた。未報告だが血清コチニン濃度を測定し、GPR141との関連を調べたところ、喫煙者で血清コチニン濃度とSNPの遺伝子型に相関を認めた。以上から、GPR141はニコチンの作用により歯周炎の発症や進行に関与している事が示唆された。 GPR141のリガンドや転写因子を調べることで機能を解明することを目的として以下の実験を行っている。被験者より白血球を分離培養し、LPS刺激時や転写活性によるGPR141の発現量の変化を確認することを目的とし、まずTHP1を用いて予備実験を行った。THP1にLPS、ニコチン刺激を加えたところ、GPR141発現量の低下を認めた。GPR141はLPS、ニコチン共刺激時に最も発現が低下する濃度及び時間を確認した。炎症性サイトカインへの影響を確認することを目的として、SiRNAを使用してGPR141をノックダウンした。SiRNAの最適な濃度や条件を確認した。今後はGPR141をノックダウンしたTHP1を使用し炎症性サイトカインへの影響を確認していく。 以上からGPR141の炎症下での遺伝子発現の変化、炎症性サイトカインへの影響を測定し、歯周炎発症への経路を考察することで、歯周炎の新たなメカニズムの一端を明らかにする可能性が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
歯周炎のGPR141のリガンドや転写因子を調べることで機能について解明することを目的として以下の実験を行っている。 歯周炎患者より白血球を分離培養し、LPS刺激時や転写活性によるGPR141の発現量の変化を確認するに当たり、まずTHP1を用いて予備実験を行った。THP1にLPS、ニコチン刺激を加えたところ、GPR141発現量の低下を認めた。THP1に対しLPS、ニコチン共に0.001、0.01、0.1、1.0μg/mlで濃度を振り分け刺激を加えたところ、1.0μg/mlでの刺激時に最も発現が低下した。またTHP1をLPS、ニコチン共に1.0μg/mlで刺激後、1、4、12、24、48、72、96時間、1週間で発現を確認した。結果としてGPR141の発現量は、刺激後12時間で最も低下した。同様の条件でIL1βでは発現量の上昇を確認している。 GPR141の遺伝子発現と炎症性サイトカインへの影響について調べ、遺伝子の機能を検討することを目的として、SiRNAを使用してGPR141をノックダウンした。GPR141をSiRNAを用いてノックダウンした報告は無く、SiRNAの最適な濃度や時間、条件を検討した。 現在GPR141をノックダウンしたTHP1にLPS、ニコチン共に1.0μg/mlで刺激し、12時間経過した後にmRNAを抽出した。今後はGPR141をノックダウンしたTHP1を使用し炎症性サイトカインへの影響を確認していく。
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今後の研究の推進方策 |
歯周炎のGPR141の機能について解明することを目的として以下の実験を計画している。 GPR141をノックダウンしたTHP1にLPS、ニコチン共に1.0μg/mlで刺激し、mRNAを抽出している。IL1β、TNFα、IL10、IL12、IL6、IL23等の炎症性サイトカインへの発現量の変化を確認し、GPR141の機能について考察する。ここまでの成果を論文として発表することを考えている。 その後の計画としては、①上記の成果により使用する細胞は変わる可能性があるが、SiRNAを用いてGPR141をノックダウンしたTh2についてLPS刺激、ニコチン刺激を加え、炎症性サイトカインへの影響をマイクロアレイを用いて網羅的に解析する。②GPR141にGATA-3がGPR141に結合することをゲルシフトアッセイ(EMSA)で検討し、GATA-3によって転写活性を受けるか、SimpleChIP® Plus Enzymatic Chromatin IPキットを使用し、クロマチン免疫沈降(ChIP)法にて発現量を解析する。③Th2細胞を用いてGPR141へのGATA-3結合時の炎症性サイトカインへの影響を(株)ジェネティックラボに依頼し、マイクロアレイを用いて網羅的に解析する。④GPR141へのニコチンおよびNAGlyの結合を高感度ルミノメーターを使用し、ルシフェラーゼアッセイにて解析する。⑤歯周炎被験者から採血しCD294 (CRTH2) MicroBead Kitを使用してTh2細胞を分離・培養し、臨床症状とGPR141の発現量の影響を検査する。以上を検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
①SiRNAを用いてGPR141をノックダウンしたTh2についてLPS刺激、ニコチン刺激を加え、炎症性サイトカインへの影響をマイクロアレイを用いて網羅的に解析する。②GPR141にGATA-3がGPR141に結合することをゲルシフトアッセイ(EMSA)で検討し、GATA-3によって転写活性を受けるか、SimpleChIP® Plus Enzymatic Chromatin IPキットを使用し、クロマチン免疫沈降(ChIP)法にて発現量を解析する。③Th2細胞を用いてGPR141へのGATA-3結合時の炎症性サイトカインへの影響を(株)ジェネティックラボに依頼し、マイクロアレイを用いて網羅的に解析する。④GPR141へのニコチンおよびNAGlyの結合を高感度ルミノメーターを使用し、ルシフェラーゼアッセイにて解析する。⑤歯周炎被験者から採血しCD294 (CRTH2) MicroBead Kitを使用してTh2細胞を分離・培養し、臨床症状とGPR141の発現量の影響を検査する。
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