研究実績の概要 |
歯槽骨を含む顔面頭蓋の骨格の多くは膜性骨化によって形成される。申請者らは、Rhoファミリータンパク質であるCdc42(cell division cycle 42)が個体レベルでの骨・軟骨形成において、軟骨内骨化での正常な軟骨細胞の肥大化や軟骨基質の石灰化、肢芽形成期での軟骨細胞の凝集およびパターニングに重要な役割を果たしていることを明らかにした。一方、Cdc42が個体レベルの膜性骨化において果たしている機能は未だ不明な点が多い。本研究では、頭蓋における間葉細胞特異的にCdc42遺伝子を欠損させたコンディショナルノックアウトマウス(Cdc42fl/fl; Prx1-Creマウス)を用いて、膜性骨化におけるCdc42の役割について検討を行った。 コンディショナルノックアウトマウスの解析から、Cdc42が頭蓋骨形成に重要な役割を果たすことが示唆された。さらに、マウス頭蓋骨由来の初代培養骨芽細胞にCdc42の機能を阻害するCasinを作用させ、マイクロアレイ解析(Clariom S;Affymetrix社)を行うことで、Cdc42が骨芽細胞内のシグナルにどのような影響を与えているか検討した。その結果、Cdc42の機能が阻害された初代培養骨芽細胞において、骨芽細胞分化に関与するdistal-less homeobox 5(Dlx5)、insulin-like growth factor 1(Igf1)、骨芽細胞の分化マーカーであるalkaline phosphatase, liver/bone/kidney(Alpl)、骨のリモデリングに関与するmatrix metallopeptidase 13(Mmp13)の発現低下が認められた。一方、抗酸化性タンパク質として知られているMetallothionein1, 2 (Mt1, 2)などは発現の上昇が認められた。
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