研究課題/領域番号 |
18K17081
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
南川 元 北海道大学, 歯学研究院, 助教 (70625607)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 酸化チタン / 遺伝子導入 / 紫外線 |
研究実績の概要 |
臨床において酸化チタンは生物学的安定性の高さのため、歯科用インプラントや整形外科領域では人工股関節に使用されている。歯科臨床、整形外科領域でインプラントとして使用されている酸化チタンに固相による遺伝子導入技術が付加されれば、インプラント上の骨分化促進等の細胞挙動を制御できると応募者は考えた。本研究では、酸化チタンの表面形状と光機能化チタンの性質を応用して、酸化チタン表面上に導入遺伝子を付与することにより、ウイルスを用いない新規遺伝子導入方法の開発を目的とした。 直径20mm厚さ1mmのディスクを120℃の67%硫酸で75秒処理を行い凹凸を付与した。酸処理後、暗室で4週間保管したチタンディスク(OLD群)と、4週間保管後に紫外線を48時間照射したチタンディスク(UV群)を用意した。 表面形状の観察には走査型電子顕微鏡(SEM)を使用した。チタン版表面が作成されてから時間経過により表面性状の変化は認められなかった。また紫外線照射を行なっても表面性状は変化しなかった。10μlの蒸留水をチタンディスク上に滴らした表面濡れ試験ではOLD群では接触角60度以上の疎水性を示したのに対し、紫外線照射したチタン表面では超親水性を示した。 次に、紫外線照射したチタンディスクにpAcGFP1-C1 vectorをコーティングし、その後、MC3T3E1、MG-63、Hela細胞 を播種し遺伝子導入を試みた。培養液にベクターを添加し、ポリスチレンディッシュで細胞培養したものを対照群とした。GFPの定量はCell Biolabs社のGFP Quantification Kitを用いた。培養24時間後にGFPを計測したところ、チタンディスク上にベクターをコーティングし培養した群では、すべての細胞でGFPの発現が確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
動物実験を行う予定であるが、実験のセットアップに時間がかかっている。プレ実験が済み次第データを取る予定である。また、細胞内GFPを共焦点レーザー顕微鏡による確認を行っているが、バックグラウンドのシグナルが認められ、十分なコントラストを得られていない。前処理の方法を含め、最適濃度の再検討を行う必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
動物実験のセットアップができ次第、動物実験を行う予定である。具体的には、ラット実験モデルを利用する。円柱状純チタン(チタンワイヤーより製作)のインプラント体を各種酸溶液にて酸処理する。ラット大腿骨にGFP遺伝子をコーティングしたインプラント体を埋入する。埋入後にインプラント体を含む大腿骨を摘出し、インプラント周囲組織におけるGFPの発現を確認する。手法としては、蛍光顕微鏡によるGFPシグナルの確認、組織切片で抗GFPモノクローナル抗体を用いて免疫組織化学的解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
動物実験の計画に遅れが生じているため、その費用部分で次年度使用額が生じた。今後、動物実験を組み立てていく中で使用する予定である。
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