2019年度はラット実験モデルにて光機能化インプラントによる遺伝子導入の検討を行った。チタンワイヤーより製作した直径1mm高さ2mmの円柱状純チタンを67%硫酸で酸処理を行い、インプラント体として使用した。吸入麻酔薬(イソフルラン)をラットに吸入鎮静させて、紫外線照射したインプラント体にpAcGFP1-C1 vector をコーティングさせ、ラット大腿骨に埋入した。埋入後2日後、2週後に安楽死させ、インプラント体を含む大腿骨を摘出した。摘出した組織からインプラント体を除去後、薄切切片を作成した。抗GFPモノクローナル抗体を用いて免疫染色を行い、インプラント周囲組織におけるGFPの発現を確認したところインプラント体周囲組織にGFPが発現していることを確認できた。 また、in vitroにおいて紫外線照射したチタンディスクにベクターをコーティングし、その後、MG-63細胞を播種、培養し、細胞内GFPを共焦点レーザー顕微鏡により確認したところ、細胞内GFPの発現が認められた。酸処理したチタンディスクと機械研磨したチタンディスク上で細胞内GFPを比較したところ、酸処理チタンの方がGFPの発現が多く確認できた。また、この現象はGFP quantitation Kitによる定量解析の結果と一致した。酸処理によってもたらされたチタンの微細な三次元構造が遺伝子導入に有利に働いたと考えられる。 以上の結果をもとに、引き続き遺伝子導入効率化のため濃度設定と、BMP-2やVEGF、PDGF、TGF-βなどの骨造成を亢進させる因子のベクターを導入する実験を進めていたが研究者の転出のため、実験を中止した。
|