研究課題/領域番号 |
18K17085
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
中村 香織 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 非常勤講師 (50817632)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | エクソソーム / 組織再生 |
研究実績の概要 |
我々は各組織由来の間葉系幹細胞(MSCs)を比較し滑膜由来MSCs(SynMSCs)が高い軟骨分化能を有し、軟骨や半月板の再生に有用であると報告してきた。近年、MSCsから分泌されるエクソソームが宿主細胞の組織再生能に作用するという報告があり注目されている。一方、異なる組織由来のMSCsから放出されるエクソソームの差異についての報告はない。本研究の目的は軟骨再生に関与する宿主細胞である軟骨細胞とSynMSCsの増殖能、遊走能に対する各組織由来のエクソソームの作用を比較検討することである。 【方法】患者より得た滑膜、骨髄、筋肉、脂肪からMSCsを単離、培養し、培養上清よりサイズ排除法にて各組織由来のエクソソームを精製した。軟骨細胞とSynMSCsに各組織MSCs由来のエクソソームを添加した群をSyn群、BM群、Mu群、Adipo群、PBSを添加した群をControl群とした。各群に対し、増殖能をCCK-8 assay(n=5)、遊走能をTrans well assay(n=4)で評価し、統計学的検討を行った。 【結果】軟骨細胞、SynMSCsの増殖能はSyn群、BM群、Mu群、Adipo群の全てのエクソソーム投与群においてControl群に比較し有意に上昇(P<0.05)を認めた、各エクソソーム投与群間での有意な差は認めなかった。軟骨細胞の遊走能も同様に全てのエクソソーム投与群で有意に上昇(P<0.05)を認めたが、各エクソソーム投与群間での有意な差は認めなかった。一方、SynMSCsの遊走能にはControl群に比較し有意な差は認めなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題では以下の3段階の研究に大別される 1. 滑膜、歯肉、歯髄、骨髄MSCs由来のエクソソームに対するレシピエント細胞の応答の評価(増殖補助能、遊走補助能、分化補助能)。MSCs、軟骨細胞に対し、異なる細胞由来MSCsエクソソームと線維芽細胞エクソソームを一定濃度でそれぞれ添加し、増殖補助能、遊走補助能、分化補助能を評価する。 2. エクソソームの顎関節円板再生能 (in vivo)ラット顎関節円板切除モデルに上記のMSCs由来エクソソーム等の投与を従来法であるMSCsの投与と比較検討する。ラット顎関節円板切除後、エクソソームとMSCsをそれぞれ投与する。投与4週後の軟骨、関節円板再生能を巨視的、組織学的、免疫学的(Col1.Col2)に評価する。また、実験1のin vitroの結果と比較検討する。期待される結果は実験1で軟骨分化補助能が有意に優れたエクソソームがより正常組織に近い関節円板再生を促すことである。 3. エクソソームによる顎関節円板再生はmicroRNAを介して行われる。DGCR8ノックアウトラットより得たエクソソームを炎症物質誘発顎OAモデルに対し投与する。投与4週後の軟骨、半月板再生能を巨視的、組織学的、免疫学的に評価する。 このうち実験1が終了しており、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究課題の推進方策としては下記の2段階を検討している。 2. エクソソームの顎関節円板再生能 (in vivo)ラット顎関節円板切除モデルに上記のMSCs由来エクソソーム等の投与を従来法であるMSCsの投与と比較検討する。ラット顎関節円板切除後、エクソソームとMSCsをそれぞれ投与する。投与4週後の軟骨、関節円板再生能を巨視的、組織学的、免疫学的(Col1.Col2)に評価する。また、実験1のin vitroの結果と比較検討する。期待される結果は実験1で軟骨分化補助能が有意に優れたエクソソームがより正常組織に近い関節円板再生を促すことである。 3. エクソソームによる顎関節円板再生はmicroRNAを介して行われる。DGCR8ノックアウトラットではprimary mciroRNAのプロセッシングをブロックする事により、microRNAの合成を阻害する。前述のようにタンパク、mRNA、microRNAをエクソソームは内包している事、腫瘍の転移におけるmRNA、microRNAの役割は知られているが、そのうちのどの作用が組織再生において重要かは示されていない。DGCR8ノックアウトラットより得たエクソソームを炎症物質誘発顎OAモデルに対し投与する。投与4週後の軟骨、半月板再生能を巨視的、組織学的、免疫学的に評価する。期待される結果としてはDCRG8ノックアウトラット由来エクソソームではOA軟骨再生効果を認めない。本結果はエクソソームの効果の差異を生むmicroRNAの解析へと発展する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度主に行った実験は以下のようである。1. 滑膜、歯肉、歯髄、骨髄MSCs由来のエクソソームに対するレシピエント細胞の応答の評価(増殖補助能、遊走補助能、分化補助能)。MSCs、軟骨細胞に対し、異なる細胞由来MSCsエクソソームと線維芽細胞エクソソームを一定濃度でそれぞれ添加し、増殖補助能、遊走補助能、分化補助能を評価する。増殖補助能の検討。エクソソームフリーのメディウムまた2 × 10^10 個/mLとなるように各エクソソームを添加したメディウムを用いて、MSCs、軟骨細胞の培養を行い、細胞数をCell Counting Kit-8 assay (CCK-8; Dojindo, Kyushu Island, Japan)を用いて経時的に計測。遊走補助能の検討。トランスウェル、インサート上面にMSCs、軟骨細胞をまき、プレートウェルに各エクソソーム添加メディウムを満たす。4時間後フォルマリンで固定し、DAPIで核染色し遊走した細胞数をカウントする。軟骨分化補助能の検討。MSCsを軟骨分化溶液で満たし15分遠心、各エクソソームを添加、3週間培養。3週後検体採取、組織を作成。サフラニンO染色、にて軟骨分化を評価する。 このように本年度の実験が主にinvitroであり、物品の購入がセール等で安くすみ、一方来年度の研究にIn vivoのものが多く経費が来年どに多くなることが予想されたため。
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