歯科インプラント治療において,インプラント間の歯間乳頭の再建は最も困難な治療の一つであり,インプラント間歯槽骨の維持は審美性の確保のために必要不可欠である.インプラント体周囲骨吸収は,不十分な口腔衛生,付着歯肉の不足,骨への負担過重,オーバーヒート,インプラント体-アバットメント間のマイクロギャップによる細菌感染などの,様々な病因の関連する複雑な現象とされている.これらの中で,骨への負担過重とインプラント体-アバットメント間のマイクロギャップは,アバットメント連結様式の差異に影響される因子であり,臨床において使用するインプラントを選択する際の一つの基準となりうる.一般的に,インプラント間距離が3 mm未満になるとインプラント間歯槽骨が喪失するとされている. 本研究では,インプラントの3次元有限要素解析 (FEA)モデルの作製から解析までを1つのCADソフトウェアで行うことで,アバットメント連結様式がインプラント間歯槽骨に与える力学的影響を解析することを可能とした.その結果,インプラント間歯槽骨だけでなく,インプラント構成要素であるアバットメント,アバットメントスクリュー,インプラント体の応力伝達のメカニズムも解明され,インプラント間距離が3mm未満となった場合でもコニカルコネクションが力学的に最適なアバットメント連結様式であることが同定された.さらに模型実験を行い,コニカルコネクションタイプの連結様式を有する2種類の既製のインプラントシステムを使用し,アバットメントの材質やデザインを変化させ,力学的に有利なアバットメント形態を同定した.
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