歯周病やその他口腔内疾患により失われた顎骨組織再生やインプラント治療時の顎骨骨増生のために、自家骨・異種骨・人工骨などの様々な骨移植材が用いられている。しかしながら①適応症が狭い②満足のいく予知性が得られない③自家骨採取における患者の苦痛④非吸収性の骨補填材の必要性(それによる体内への残存)など様々な問題が残されており、さらなる適応症の拡大と、理想的な骨組織再生を目的としてTissue engineering の3要素の観点から、A:成長因子B:細胞移植C:Scaffoldについて様々な研究が行われ、特にiPS細胞の登場以来、細胞移植療法に注目が集まっている。もちろん、細胞移植の臨床応用を考えると、人工足場材の存在が不可欠となるが、人工足場材の細胞保持能、吸収性等の観点から、移植細胞数や細胞機能を制限するという問題点が残っており、現在のところ、これらの問題を打開できるような理想的な人工足場材は存在しない。そこで今回着目したのが、脱分化脂肪細胞集塊Cluster of DFATs/ECM complex (C-DFAT)による細胞移植療法である。細胞はI型コラーゲンを主とする細胞外基質(ECM)を産生している。この細胞自身が産生するECMを利用し細胞集塊を形成することで、人工足場材を必要としない細胞移植が実現すると考え、本研究では多分化能を持つ組織幹細胞様細胞の一つである脱分化脂肪細胞(de-differentiated fat cell: DFAT)からC-DFATを形成した。
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