研究実績の概要 |
歯根膜を主体とした歯周組織の再生療法として、GTR法やエムドゲインなどが臨床応用されているが、抜歯に至るような重度歯周炎に対しては適応が困難である。重度歯周炎で抜歯に至った歯でも歯周組織を再生することができれば、欠損補綴に代わる新たな治療法になるものと考える。そこで、抜歯に至った歯を利用し、口腔外で新たに歯周組織を形成するとの着想に至った。代表者はこれまで、エピジェネティクス修飾を応用した歯根膜由来マラッセ上皮細胞の幹細胞化に成功し、さらにこの細胞を間葉系幹細胞や血管内皮細胞へ分化させる事にも成功した。そこで本研究では、現在新たな再生療法として臨床研究されている細胞シート工学を応用し、シート内の細胞にエピジェネティクス修飾を行い、口腔外で歯牙と人工骨である骨補填材との間に歯根膜を形成する、歯周組織再生ユニッ トの作製を行うこととした。これに成功すれば、将来的な臨床応用への可能性が広がる。本年度は、人工的な歯根膜類似細胞集団におけるメチル化解析を行った。ブタ歯髄細胞、ヒト臍帯静脈内皮細胞、エピジェネティクス試薬の5-Aza-2'-deoxycytidine(5Aza)とバルプロ酸によって脱分化させたブタマラッセ上皮細胞とを共培養し(共培養群)、前年度に行った定量的RT-PCR法で発現変化のみられた遺伝子のうち、CpG islandsが存在した歯根膜関連遺伝子のMsh homeobox 1 (Msx1)および間葉系幹細胞関連陽性遺伝子のCluster of differentiation 29 (Cd29)について定量的メチル化特異的PCR(quantitative methylation-specific PCR, qMSP)法を検討した。qMSP法の結果、Msx1およびCd29は, Controlである歯髄単独培養群に比べ共培養群でのメチル化レベルの有意な低下を認めた。このことから、5Azaを応用して作製した歯根膜類似細胞集団での遺伝子発現変化には5Azaによる脱メチル化作用が影響していることが明らかとなった。
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