本研究では,石膏の任意形態付与が可能であるという特性を活かし,石膏を出発物質として石膏硬化体に対しリン酸処理を行い,リン酸処理から得られたリン酸カルシウム系足場材について基礎的な評価を行い,骨補填材として有用であるか検討を行った. 最終年度では,前年度から引き続き,材料特性試験や力学試験を継続して実施し,細胞培養実験を実施した.力学試験結果では,作製した3種類の化合物がそれぞれ異なる力学挙動を示していた.また,溶解試験では,pH11で作製した化合物が最も多く溶解しており,その結果が力学特性の結果と対応していることを確認した.その他の化合物も同様の結果が得られた.また,細胞実験として細胞増殖を評価した結果,いずれの化合物においても同等の細胞増殖能を示すことが明らかとなった.pH7で作製した化合物がハイドロキシアパタイトであるということを考慮すると,pH9,pH11で作製した化合物はハイドロキシアパタイトと同等の細胞増殖能を有していることが分かり,これらの化合物も細胞為害性が無いことが示唆された. 以上より,これまでに生体材料の無機成分として用いられていたハイドロキシアパタイトやβ-TCPといったバイオセラミックスとは異なる無機材料を石膏を出発物質として作製し,力学特性評価,材料特性評価,細胞親和性評価を実施した.作製した物質はハイドロキシアパタイトやβ-TCPとは異なる特性を示し,新たな生体材料における無機材料として使用できる可能性が示唆された.
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