研究課題/領域番号 |
18K17106
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研究機関 | 大阪歯科大学 |
研究代表者 |
山脇 勲 大阪歯科大学, 歯学部, 助教 (70805176)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | インプラント |
研究実績の概要 |
インプラント補綴は欠損歯に対する治療の一つであり,インプラント補綴の有する症例数が増加するにつれて、インプラント周囲炎の報告も増えてきているのが現状である.インプラント周囲炎の罹患率は5年後3.4%,10年後5.8-16.9%であった. 特に生活習慣病のトップに挙げられる糖尿病患者におけるインプラント治療は創傷治癒期間が長いとの報告があり,このような患者では不完全なオッセオインテグレーション期間にインプラント周囲炎の関連細菌に晒されるリスクが高いのは明白である.また,糖尿病は発症・進行においては歯周病と双方向性が認められ,オッセオインテグレーションおよびインプラントの成功率を低下させるとの報告も散見されるが,確たるエビデンスを有する予防策は見当たらない. しかし,一旦オッセオインテグレーションが強固に獲得されれば,糖尿病患者においても非糖尿病患者と同程度のオッセオインテグレーション量が獲得できると報告されている. よって,早期オッセオインテグレーションの強固な獲得と歯周病原細菌に対する抗菌性が術後インプラント周囲炎予防の最大の課題として挙げられる. 申請者は,グルコース濃度がナノレベル表面制御構造チタン表面上での硬組織形成に及ぼす影響について報告している.そこで本研究では,さらに糖尿病モデルでのインプラント周囲炎関連菌への抗菌性と早期オッセオインテグレーションを獲得するシステムを解明することを目指している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
JIS規格2級の純チタンプレートを#2000まで研磨し,実験群は純チタン金属を30℃の室温下で10 M酸化ナトリウム水溶液に24時間攪拌・浸漬し,表面にナノシート構造を析出,このとき大気圧下と共に反応を活性化させるために室温圧力下での合成を行った.24時間後に超純水にて洗浄を繰り返し,Na等の溶存イオンの除去を行い,ろ液導電率が5μS/mになるまで洗浄した.真空乾燥後,歯科技工用ファーネスを使用して600℃で1時間加熱処理し表面に酸化膜を作製した.対照群は#2000まで研磨した純チタンを同様に加熱処理したものを使用した.生後8週齢の2型糖尿病モデルラットの大腿骨骨髄から間葉系幹細胞を単離し,継代培養した.P.gingivalis, P.intermedia, T.denticolaを培養し,骨髄間葉系細胞と同時に実験試料上に播種し,各細菌添加群,無添加群でグルコース濃度(5.5,8,12,24mM)に調整した培養液にて硬組織分化誘導を行い、硬組織形成に関する評価を行った.
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今後の研究の推進方策 |
P.gingivalis,P.intermedia,T.denticolaを1.0×108CFU/wellに調整し,各種実験試料上に播種し,初期培養時間5,10,30,60分,その後中期培養時間3,6,9,12,24時間,後期培養時間2,4,7日間にて評価を行う.同方法にて,実際にインプラント体部分に酸化TNS構造を析出させP.gingivalis,P.intermedia,T.denticolaを感染させたGKラットの下顎骨に酸化TNS析出純チタンインプラントを右側に埋入し,酸化膜チタンインプラントを左側に埋入.評価は以下のものとする.①埋入後,1,2,4週後屠殺し,固定・包埋後にインプラント体を除去する.埋入部位の切片を作製し,TNS析出面と非TNS析出面の金属表面と骨の界面および周囲新生骨の観察を光学顕微鏡にて行い,オッセオインテグレーションの評価を行う.②埋入部位を含めた骨をそのまま除去し,ナノ構造析出チタンプレートと骨との接着について検討するため,引っ張り試験を行い検討する.③埋入インプラント周囲組織よりTotal RNAを分離し,cDNAを作製後,骨組織特異的な遺伝子について発現レベルをReal-time PCRによって骨分化の程度を評価する.④また埋入インプラント周囲再生組織の血管新生の程度を本大学解剖学講座との共同研究ににてアクリル樹脂注入標本を作製し,SEMにて観察する.
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次年度使用額が生じた理由 |
チタンの自動研磨機に購入に際し、前回取得した研究活動スタート支援を用いて購入できたため、次年度使用額が生じた。 次年度では、チタン器材の充実を図り、よりサンプル数を増加した研究を行う予定である。
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