酸化TNS構造析出チタン表面上にGK系ラットの骨髄間葉系細胞を播種し,空腹時血糖値を参考に,通常グルコース群(5.5mM),コントロールされた糖尿病患者群(8.0mM),非コントロール糖尿病患者群(12.0mM,24.0mM)の4群に濃度調整し,細胞増殖試験を行った結果、酸化TNS構造析出チタンの方が,すべてのグルコース濃度において有意に細胞の増殖を促進させた. また硬組織分化誘導を行った結果,ALP活性はグルコース濃度の上昇とともに減少したが,OCN産生量とCa析出量はグルコース濃度8.0 mMで著明に減少したが,これより高濃度になると増加した.しかし,酸化TNS構造析出チタンは,無処理と比較してこれら分化マーカーの増加を認めた.Ca/P比はグルコース濃度に応じて,OCN産生量およびCa析出量に類似した傾向を示した.無処理チタンでは,高グルコース濃度のCa/P比が通常グルコース濃度より高くなったが,酸化TNS構造析出チタンでは通常グルコースと同等Ca/P比が維持された. 炎症性サイトカインはグルコース濃度が上がるにつれて高い発現を認めたが,酸化TNS構造析出チタン表面では,グルコース濃度が高くなっても発現は上昇しなかった. 以上の結果から,無処理のチタン上ではグルコース濃度の上昇によって,一度は硬組織形成量が低下するが,24mMという高グルコース濃度になると一転して,硬組織形成量が増加したが,多量に形成された硬組織は通常のグルコース濃度で形成された硬組織とは質が異なるものであった.それに対して,酸化TNS構造析出チタンでは通常のグルコース濃度と同じ質の硬組織が多量に形成することが可能であることが示唆された.
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