研究課題/領域番号 |
18K17109
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
勝田 悠介 東北大学, 大学病院, 特任助手 (70781277)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | CAD/CAM冠 / 脱離 / レジンセメント |
研究実績の概要 |
本研究の大きな目的はCAD/CAM冠の早期脱離に及ぼす影響について、接着性レジンセメントの重合動態を解明することにより、その解決方法を探索することである。 本研究に用いているデュアルキュア型接着性レジンセメントは従来のプライマー併用型レジンセメントと異なり、プライマーを使用しないセルフアドヒーシブタイプではあるが、支台歯側からの化学重合を促進し、タッチキュア獲得を目的とした硬化促進プライマーを併用することが推奨されている。 そこで、本年度は主に硬化促進プライマーがレジンセメントの重合度およびビッカース硬さに及ぼす影響について検討を行った。 まず、硬化促進プライマーおよび光照射がレジンセメントの重合度に及ぼす影響をフーリエ変換赤外分光分析装置 (FT-IR) を用いて検討した。硬化促進プライマーや光照射の有無に関わらず、レジンセメントの重合度は重合開始から24時間までは上昇を続けるが、それ以降に大きな変化は見られず、24時間以降は条件による有意差も確認されなかった。さらに、硬化促進プライマーは光照射の有無に関わらず重合度の上昇に影響を及ぼし、光照射が影響するのは重合開始から30分以内の初期においてであった。 続いて、硬化促進プライマーおよび光照射がレジンセメントのビッカース硬さに及ぼす影響を評価した。全ての条件においてビッカース硬さは重合後48時間でプラトーに到達した。ビッカース硬さに及ぼす影響は光照射よりも硬化促進プライマーによるものの方が大きいことが示された。 さらに、重合度とビッカース硬さは正の相関関係にあり、特に重合初期においてより顕著にその相関関係を示している。このことより、レジンセメントのビッカース硬さは重合度を反映していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度予定していた研究は概ね進行することができた。上記結果に辿り着くまでに、予備実験を繰り返し、試料形態や条件設定、経過時間設定などを検討してきた。一定の成果は得られたが、以後も論文執筆に至るまで条件の設定を再検討していく必要もあると考えられるため、概ね良好とした。 その他に計画しているレジンセメントの基礎物性評価のために、現在は実験試料の製作および条件の探索を行なっている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の進捗より、プライマー併用型セルフアドヒーシブタイプのデュアルキュア型レジンセメントの重合度とビッカース硬さの相関関係について示された。光照射がレジンセメントの重合に及ぼす影響は初期に限局しており、その後の重合には硬化促進プライマーの影響が大きいことも示唆された。 今後は、電子スピン共鳴装置 (ESR) や示差走査熱量計 (DSC) による重合度の多角的評価や、重合初期における接着強度試験を予定している。 そして、重合初期における負荷が接着強度に与える影響などを検討し、接着操作以外の因子によるCAD/CAM冠早期脱離の要因を解明すると同時に、早期脱離の生じにくい条件を探索する。また、これらの基礎的データを元に、今後実施する臨床研究での評価項目の参考にし、CAD/CAM冠脱離の防止、良好な長期予後の獲得に向けた材料学的データの集積、およびその解決方法を探索を行なっていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験計画の変更や資材の節約により、温存できた資金。主にさらなる実験試料製作のために使用する予定。 また新型コロナウイルス感染症の影響で、予定していた旅費を使用しない場合もあった。
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