研究課題
本研究では,都市部一般住民のランダムサンプルを対象とした大規模な前向きコホート研究により,歯周病および咀嚼能力の低下がメタボリックシンドロームとその構成因子に及ぼす影響を縦断解析によって明らかにすることを目的とした.まずは,メタボリックシンドロームや動脈硬化が進行した結果として,循環器病の発症をアウトカムとした縦断解析を行った.分析対象者を国立循環器病研究センター予防健診部の健康診査を受診した1547名とし(平均追跡期間:4年),循環器病としては脳卒中および心筋梗塞とした.口腔機能としては,咀嚼機能の客観的指標として最大咬合力を測定した.最大咬合力と循環器病の発症との関連を解析したところ,ベースライン時に最大咬合力が低い者ほど,約4年後の循環器病発症のリスクが高いことが明らかとなった.また,口腔機能の一つとして咀嚼能力に関する基礎資料の構築も進めており,口腔健康状態が不良な場合に,咀嚼能力が経年的にどの程度低下するのかを検討した.本研究では,ベースライン時および5年後の再評価時の両方の歯科検診を受診した1201名を分析対象者とし,咀嚼能力を評価した.対象者における咀嚼能力の経年的低下に対して,どのような因子が影響を及ぼすかを検討し,それを用いて予測モデルを構築した.本研究で開発した予測モデルは,約5年後の咀嚼能力低下を定量的に予測し,そのリスクの高い者を同定して咀嚼能力低下を予防する上で有用なツールになると考えられる.
3: やや遅れている
平成30年4月から平成31年3月までの歯科検診にて,212名の再評価対象者のうち,同意の得られた187名に対して再評価を行った.また,13名の初回歯科検診対象者のうち,同意の得られた11名に対して初回歯科検診を行った.平成30-31年度内で400名の歯科検診再評価,および100名の初回歯科検診を目標としていたことから,データ収集の進捗状況としてはやや遅れていると思われる.縦断解析として,ベースライン時の最大咬合力と循環器病発症との関連を見出せたことから,口腔機能と生活習慣病との関連について,今後の前向きコホート研究の基礎資料を得ることができたと考えている.
平成30年4月から平成31年3月までの,ベースラインおよび再評価を含めた全225名の対象者のうち、同意の得られた者は198名(88%)であった.同意の得られなかった理由のうち最も多いものは「時間がない」という理由であったため,検診の円滑な進行を推進できるよう見直しを図りたい.また,「歯科医院に定期受診に通っているため必要ない」との理由も見られたため,研究の意義を同意取得の際に明確に伝えるようにする.
予定していたよりも歯科検診対象者が少なかったため,物品費の使用が少なかったと考えられる.翌年度では,収集したデータを解析するためのパソコンの購入,および唾液解析のための外注委託検査費用として支出する予定である.
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