インプラント埋入部位の骨量が不足する場合,チタン薄膜などを併用するGBRが用いられるが,このような薄膜構造体に対して生体活性を付与する表面改質についての検討はなされていない.そこで本研究ではチタン薄膜構造へ対する至適な表面処理法を検討した. 純チタン薄膜(厚径:20 μm)を準備し, 酸処理群,アルカリ処理群および未処理群の試料を準備した.材料特性の評価(SEMによる表面構造の観察,接触角の測定によるぬれ性の評価,腐食深度測定),力学的評価(引っ張り試験)を行った.アルカリ処理群では超親水性を示した.酸処理群は薄膜の腐食が大きく,引張試験にて有意に低い値を示したが,アルカリ処理群では未処理群との差は少なかった. 続いて,未処理群およびアルカリ処理群をSBFに浸漬し,析出構造体の観察,元素分析,および浸漬前後の重量変化率測定によりアパタイト形成促進の評価を行った.雄性SDラット(8週齢21頭)の頭蓋骨に骨欠損を形成し,チタン薄膜(アルカリ処理,未処理)にて被覆,もしくは未被覆とし,縫合した.4週間後,骨新生率(BTA)および骨薄膜接触率(BMC)測定による組織学的評価を行った. SBF浸漬後,アルカリ処理群では未処理群と比較し,成熟したアパタイト様析出物が観察され,CaおよびPの構成比率が両群で上昇していた.重量変化率では,アルカリ処理群が有意に高い値を示した.また,アルカリ処理群では,チタン薄膜に沿って骨伝導が観察され,欠損部中央部においても骨組織が新生され,BTAおよびBMCは高い値を示した. アルカリ処理はチタン薄膜の機械的強度に影響することなく表面改質が可能であった.また,SBF中でのアパタイト形成促進およびin vivoでの骨形成促進作用を示した.以上より,GBRに用いる生体材料としてアルカリ処理を行ったチタン薄膜は有用となりうることが明らかとなった.
|