研究課題/領域番号 |
18K17125
|
研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
稲葉 菜緒 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 助教 (00814170)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 骨粗鬆症 / インプラント / PTH製剤 |
研究実績の概要 |
副甲状腺ホルモン(Parathyroid hormone:PTH)製剤は間歇的投与(毎日1回の投与)による骨同化作用から骨量の増大を示す骨粗鬆症治療薬であるが、近年では、荷重環境下でPTH製剤を作用させると骨形成が著明に促進することが明らかとなっている。 本研究の目的は、インプラントを介して与えられる荷重とPTH製剤の間歇投与の併用がインプラント周囲骨組織に与える影響を検索し、そのメカニズムを解明すること、と低侵襲で安全性の高いインプラント治療における科学的根拠の基盤を構築することにある。 本年度は、研究協力者の助言を得て、実験動物モデルの作成を行った。ラット卵巣を摘出して骨粗鬆症モデルを作成し、上顎両側第1大臼歯の抜歯を行った。抜歯して3週後に、骨治癒が完了した抜歯相当部にラット用インプラントを埋入した。そしてインプラント埋入直後から2週間にわたり、PTH製剤の口腔内間歇的投与(頬粘膜内)とPTH製剤の全身投与を行った。なお、生理食塩水の局所投与と全身的投与をそれぞれの対照群とした。インプラント埋入2週間後に屠殺を行い、上顎骨、長管骨ならびに骨髄組織と骨組織を採取し、マイクロCTによる3次元的構造解析、各種組織染色による組織形態学的解析、免疫染色による免疫組織科学的解析、ならびに骨細胞と骨髄細胞の遺伝子解析などを行った。その結果、PTH製剤投与群は投与方法に関わらず、生理食塩水投与群に比べ有意に3次元的構造が向上することが分かり、現在その他の解析項目から、種々の定量解析を行っている段階である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ラット卵巣を摘出しラット骨粗鬆症モデルを作製後、抜歯窩にインプラントを埋入したラットインプラントモデルを作製し、PTH製剤を口腔内または全身に間歇的投与することで、インプラント周囲骨および長管骨の骨量は生理食塩水投与した場合と比べ増加することをマイクロCTによる3次元的構造解析により確認できた。したがって、当初の計画通り、研究計画はおおむね順調に進んでいると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
ラット骨粗鬆症モデルを作製し、PTHの口腔内間歇的投与がインプラント周囲骨の骨量を増加させることが明らかになったことから、今後はインプラント埋入後にPTH製剤投与と荷重を加え、効果を確認する計画である。 インプラント埋入後2週間生理食塩水またはPTH製剤の口腔内間歇的投与を行った後に生理食塩水のみを投与する群、PTH製剤を口腔内間歇的投与する群、デバイスを用いた規則的繰り返し荷重を付与する群、PTH製剤の口腔内間歇的投与と荷重を付与する群の4群を作製する。 その後、屠殺しマイクロCTによる3次元的構造解析によりインプラント周囲骨組織の骨量、骨密度の検索を行う。さらに、インプラント周囲骨における骨細胞数および破骨細胞数の定量解析により組織形態学的評価とSclerostin、PTH1R、β-catenin、Wnts、RANKLの免疫染色による定量比較解析による免疫組織化学的評価を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
予定していた免疫染色の特異抗体を購入しなかったために発生した金額であるため、次年度に速やかに抗体4本分の購入を行う。
|