本研究の目的は、インプラントを介して与えられる荷重とPTH製剤の間歇投与の併用がインプラント周囲骨組織に与える影響を検索し、そのメカニズムを解明することと、低侵襲で安全性の高いインプラント治療における科学的根拠の基盤を構築することにある。 ラット卵巣を摘出して骨粗鬆症モデルを作成し上顎両側第1大臼歯の抜歯を行った。抜歯3週後に、骨治癒が完了した第1大臼歯相当部にラット用インプラントを埋入した。そしてインプラント埋入直後から2週間にわたり、PTH製剤の間歇的投与を行った。また、荷重付与群と、PTH投与+荷重付与の併用群も作成した。インプラント埋入2週間後に屠殺を行い、上顎骨、長管骨ならびに骨髄組織と骨組織を採取し、マイクロCTによる3次元的構造解析、各種組織染色による組織形態学的解析、免疫染色による免疫組織科学的解析などを行った。その結果、PTH製剤投与はインプラントと無関係の長管骨における骨量と骨密度を増大し、薬剤効果があることが確認できた.インプラント周囲骨組織を観察した結果、PTHの間歇的投与はインプラントスレッド内部の骨量を増加させた.荷重付与群では、インプラントスレッド周囲の骨量ではなく骨密度が増大していた.一方、PTHと荷重付与の併用群では、インプラント周囲骨量の増大と骨密度の増大が認められ、増大効果はそれぞれの単独群と比較して大きいことが分かった。PTHと荷重の有無に関わらず、すべての群で骨芽細胞と骨細胞が増加していたが、破骨細胞は荷重付与の有無に関わらずPTHを投与することで増加し、荷重付与群では変化しなかった。以上から、PTHと荷重の単独効果は同じではなく、また、PTHと荷重を併用することで、骨量や骨密度の増大効果と骨質の向上効果が得られることが分かった。すべての研究成果をもとに学会発表と論文投稿の準備が行われている。
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