本研究では、1)ラットにおける荷重負荷インプラント周囲炎モデルを開発すること、ならびに、2)インプラント周囲骨のコラーゲン線維/生体アパタイト結晶の配向性と骨関連細胞の解析により、組織破壊における骨質変化を解明することを研究目的とした。 本年度は前年度に引き続いて、LPS誘発性ラットインプラント周囲炎モデルの作成と、病態の組織検索を行った。前年度にもモデルは作成していたが、埋入後に起こる一定の骨吸収とインプラント周囲炎との区別が困難で、正確な知見が得られていない可能性が判明した。そこで、基本的な実験手技は同じにして、ラット用インプラントを改良し、埋入後に一部の粘膜が反転して感染が起こらないような形態に変更して、実験を行った。そして、LPS誘発性インプラント周囲炎モデルの作成実験を再度行った。その結果、時系列で撮影したマイクロCTデータと組織像により、埋入後に起こる細菌感染や骨吸収はほとんど起こっていないことが分かった。そこで新たに3次元的構造解析と組織形態学的解析、ならびに免疫組織化学的解析を中心にインプラント周囲炎モデルの病態解析を行った。その結果、軟組織においては毛細血管形成の亢進、M1マクロファージの集積増大、多形核白血球の浸潤が起こっており、炎症状態を呈していた。一方硬組織においては,軟組織との境界部分の骨表面における破骨細胞数の著しい増大と吸収窩が多く認められ、それはインプラントと骨の境界部分において著明であり、インプラントから離れていくにつれて破骨細胞数は減少していった。一方、骨芽細胞数に大きな変化は認められず、壊死骨は存在していなかった。以上から、炎症に起因する破骨細胞の増大と変化しない骨芽細胞数によって骨吸収が進行している可能性が考えられた。また、コラーゲンの配向性はインプラントと骨境界部分で大きく乱れることも分かった。現在学会発表準備と論文作成中である。
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