研究課題/領域番号 |
18K17131
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
横山 愛 日本大学, 松戸歯学部, 助教 (70610252)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 唾液腺 / 分泌機能亢進因子 |
研究実績の概要 |
唾液は唾液腺から分泌される。唾液と義歯の関係については、唾液は義歯と口腔粘膜の間に一層の膜として存在し、陰圧状態を保つことで義歯の吸着を維持している。唾液は義歯の吸着に役立つだけでなく、様々な生理作用があるため口腔内環境を健康に保つために重要な役割を果たしている。高齢者の唾液分泌量は減少することが知られており、 唾液腺の唾液分泌能低下は義歯の吸着にとって大きな問題となる。本研究の目的は、分泌機能が低下した唾液腺に対して分泌機能を亢進させる因子を同定することで、低下した唾液腺の機能を回復させ唾液量を増やし義歯の吸着向上を目指すことである。大唾液腺は左右に一対ずつ存在するが、一方の唾液腺が傷害され分泌能が低下すると反対側の唾液腺が分泌量を増加させ機能を代償する。この現象に注目し、現在までにマウスの片側唾液腺に傷害を加えた傷害側、非傷害側の唾液腺の遺伝子発現変化をマイクロアレイで解析している。コントロールとしては、片側に偽手術を施した唾液腺の非傷害側の唾液腺を使用した。 本年度は、傷害側と非傷害側の唾液腺間の遺伝子発現を解析ソフトを用いて解析し、分泌機能亢進因子候補の決定を行った。主成分分析とクラスタリングの結果より、傷害側はコントロールと比較すると、明らかに成分の変化が認められるが、非傷害側の唾液腺では成分に大きな変化は見られなかった。傷害側でコントロールと比較して2倍以上発現量が増加した遺伝子は4,821遺伝子、非傷害側では1,040遺伝子であった。その中で共通遺伝子は473遺伝子であった。今回は、傷害側で遺伝子発現量が増加したものの中で、細胞分化や増殖因子としての働きがあるFgF2とBMP2を唾液腺分泌機能亢進因子の候補として更に研究を進めることとする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の研究計画として①傷害側-非傷害側唾液腺間の遺伝子発現変化の検討および分泌機能亢進因子の候補決定②傷害側耳下腺からのシグナル因子の同定、非傷害側でのレセプターの検索③細胞におけるシグナル因子活性の検討 (in vitro)④マウス唾液腺における候補タンパク質の作用の検討(in vivo)がある。平成30年度はマイクロアレイの結果を解析し、各唾液腺の性状の確認や分泌機能亢進因子の候補の決定を行った。初年度に①が終了していることから、計画の1/4が既に終了しいるのでおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き研究計画調書通りに研究を進める予定である。 1.傷害側耳下腺からのシグナル因子の同定、非傷害側でのレセプターの検索。各耳下腺からRNA抽出用、液体窒素凍結用、10%ホルマリンPBS固定用のサンプルを用意する。傷害側で目的遺伝子(リガンド)、非傷害側で目的遺伝子に対応するレセプターの遺伝子発現をリアルタイムPCRで定量解析する。続いて、タンパク質レベルでの発現をイムノブロットで確認する。リガンドおよびレセプターの局在を調べるために切片を作製し免疫染色を施す。リガンドが血流に乗っていることを確認するために、血液を採取しELISA法で確認する。 2.細胞におけるシグナル因子活性の検討。野生型マウスの耳下腺を摘出し細胞単離処理を行い、腺房細胞の培養を行う。腺房細胞に候補に挙がったタンパク質を作用させ、そのタンパク質がどのようなシグナルとなるのかを検討する。この実験で作用させるタンパク質が市販されていない場合は、分泌タンパク質である可能性が高いことからタンパク質を菌体外に高分泌可能なブレビバチラス分泌発現システムを用いてタンパク質の発現系構築を行う。 3. マウス唾液腺における候補タンパク質の作用の検討。野生型マウスで片側唾液腺傷害マウスと偽手術マウス(コントロール)を作製する。唾液腺傷害マウスに深麻酔科下で頬切開を施し萎縮した耳下腺を露出させ候補タンパク質を注入する。傷害マウスに候補タンパク質を作用させたマウス、傷害マウス、コントロールマウスに唾液分泌を促進するピロカルピンを腹腔内投与し、唾液分泌量の比較を行う。また各マウスから耳下腺を摘出し、アミラーゼ活性を調べることにより唾液腺の機能についての検索も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、ピペットチップやチューブなどの消耗品代である。本年度は、保管してあった消耗品を使用したため、次年度使用額が生じた。次年度の使用計画は、前年度と変更はなくチューブなどの消耗品代金として使用する。
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