研究課題/領域番号 |
18K17131
|
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
横山 愛 日本大学, 松戸歯学部, 助教 (70610252)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 唾液腺 / 分泌機能亢進因子 / BMP2 |
研究実績の概要 |
昨年度は片側唾液腺傷害モデルマウスの耳下腺を用いて行ったマイクロアレイ解析から、唾液分泌機能亢進因子の候補をfibroblast growth factor 2(Fgf2)とbone morphogenetic protein 2(Bmp2)まで絞り込んだ。本年度はこの2つの候補遺伝子について更に検討を行った。まず、マイクロアレイ解析の結果の確認として傷害側耳下腺におけるFgF2とBmp2の遺伝子発現量を検討した。FgF2では、傷害側とコントロールの耳下腺でその発現量に差は認められなかったが、Bmp2の発現量はコントロールと比較して傷害側耳下腺で有意に増加しているのが観察された。このことから、候補をBmp2に絞り込み、更に検討を進めることとした。我々は研究計画調査書にも記した通り、傷害側唾液腺から何らかの唾液腺分泌機能亢進因子が分泌され、それを非傷害側の唾液腺が受け取っていると予測している。そのため、非傷害側の耳下腺についてBmp2のレセプターについて検討を行った。Bmpの受容体にはⅠ型とⅡ型が同定されており、BMP2はⅠ型受容体に分類されるbone morphogenetic protein receptor type 1A(BMPR1A)のリガンドとして知られている。非傷害側の耳下腺でⅠ型受容体のBMPR1AとⅡ型受容体のbone morphogenetic protein receptor type 2(BMPR2)の遺伝子発現量を検討すると、BMPR2の発現量はコントロールと比較して減少傾向を示したのに対し、BMPR1Aではコントロールと比較すると増加傾向にあることが明らかとなった。次に、BMP2の局在を調べるために免疫組織化学染色を行うと腺房細胞と導管細胞に局在が認められた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では研究方法として①分泌機能亢進因子の候補の決定、②傷害側耳下腺からのシグナル因子の同定および非傷害側でのレセプターの検索、③細胞におけるシグナル因子活性の検討(in vitro)、④マウス唾液腺における候補タンパク質の作用の検討(in vivo)を挙げている。本年度までに②まで実験が進んでおり、計画の2/4まで終了してる。また、③の予備実験としてマウスの初代培養細胞を用いたBMP2の至適濃度の検討を現在行っていることから、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
今後も引き続き研究計画調書に従って残りの2つの実験を進める予定である。 1.in vivoの実験として細胞におけるシグナル因子活性の検討を行う。野生型マウスから耳下腺を摘出し腺房細胞単離処理を行い、腺房細胞の初代培養細胞を培養する。BMP2タンパク質を作用させ、培養細胞のアミラーゼ活性、AQP5などの分泌関連タンパクの検索、体積、細胞増殖能の検討を行い、候補タンパク質がどのような効果を示すシグナルであるのかを検討する。 2.in vivoの実験として、野生型マウスを用いて片側耳下腺排泄導管をマイクロクリップにて閉塞させ唾液腺を萎縮させる。萎縮し分泌機能が低下した耳下腺にBMP2タンパクを注入し唾液分泌量の検討を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額には、本年度は参加予定の学会が台風や新型コロナウイルスの影響で中止となり交通費を使用する必要がなくなった代金が含まれる。また、現在はin vitroの実験を進めるために予備実験を行っているが、使用する解析キットは以前に使用していたキットが残っており、それを使用して進めているため購入していないことから次年度使用額が生じた。 使用計画としては、来年度の実験予定どおり実験動物、タンパク質、解析キットや培養細胞用プレートなどに使用する。
|