研究課題/領域番号 |
18K17135
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
石山 希里香 東北大学, 歯学研究科, 助教 (20712904)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 水酸化ラジカル / インプラント周囲炎 / 殺菌 / 再オステオインテグレーション / 長波長紫外線 |
研究実績の概要 |
銀イオンの抗菌効果は広く知られているが、その殺菌作用は比較的マイルドであり、歯科分野において病原菌を殺菌する方法としては応用されていない。しかし銀イオンを含む水溶液に波長365ー400 nmのUVAを照射すると水酸化ラジカルが発生し、殺菌活性が増強されることを発見した。そこで、本研究は、銀イオンを併用することで酸化チタンに対するUVA(長波長紫外線)照射で生成する水酸化ラジカルを応用した新しい概念のインプラント周囲炎療法の確立を目的としている。平成30年度では銀イオンと長波長紫外線照射を併用した殺菌療法の効果をin vitroにおいて検証した。まず初めに、形態学的解析を用いて2種の口腔内細菌のバイオフィルムを、歯科用インプラント表面と類似した表面構造を持つチタンディスク上に作製できる条件を確立した。次いで、浮遊菌及びバイオフィルムに対し銀イオン単独もしくは長波長紫外線照射併用療法を行った。その結果、銀イオン単独では、浮遊菌及びバイオフィルムに対して銀イオン濃度依存的に殺菌効果があることを確認した。一方、長波長紫外線照射を併用した場合も①同様に銀イオン濃度依存的に殺菌効果があること、②その殺菌効果は銀イオン単独よりも強いことを確認した。さらに発生する水酸化ラジカル量を評価したところ、銀イオン単独ではわずかに水酸化ラジカルが発生していたのに対し長波長紫外線照射を併用すると有意に発生量が大きくなることが分かった。しかし、照射時間はラジカル発生量は影響を及ぼさなかった。これらの結果から本治療方法は汚染されたインプラント表面への殺菌療法として有効であることが示唆できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度は口腔内細菌を用いたバイオフィルムの作製及び細菌に対する銀イオン及び長波長紫外線照射の殺菌効果を調べる予定であった。その結果、予定通りバイオフィルムの作製と殺菌効果をin vitroで検証することができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最終的な目的はインプラント周囲炎療法の確立である。そこで、平成31年度は、前年度に得た結果から有効な銀イオン濃度及び長波長紫外線時間の条件を決定し、汚染されたチタンディスク表面に銀イオン/長波長紫外線照射併用療法を適用し、その後の細胞の進展や増殖性などの細胞毒性及び石灰化形成能について評価し、インプラント表面への再オステオインテグレーションの可能性について評価する予定でいる。平成32年度はin vivo研究を行う。即ち、バイオフィルムが形成されたラット用チタンインプラントを銀イオン/長波長紫外線照射併用療法を適用した後、ラット口腔内に移植、骨結合を組織学的に観察し、in vivoでの殺菌治療の有効性を検証する予定でいる。またH32年度までに得られた成果を国際科学専門誌に発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度、老朽化したLED照射装置及びその関連部品を購入する予定であったが、モデルチェンジに伴い照射強度が変更したため、購入を検討する必要が生じ、別の機器を探していた。本年度はこれまで所有していた旧タイプのLED照射器を修理応用して実験を遂行したため、一部繰越金が発生した。
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