研究課題
デンタルインプラントの発展に伴い、インプラント治療は歯科のスタンダード治療となった半面、インプラント周囲炎も多く報告されるようになってきた。インプラント周囲炎では、インプラント表面の微細構造に入り込んだ細菌やバイオフィルムの殺菌除去が重要な課題となっている。そこで、本研究では0-1000 uMの銀イオン含有溶液に予めバイオフィルムを形成したチタン表面を浸したのち長波長紫外線(365-400nm)照射を行い、殺菌効果を検証した。その結果、銀イオンのみの群と比較して、長波長紫外線照射を併用した群において殺菌効果が高いことが確認できた。次いで、殺菌効果のメカニズムを検証したところ、細菌に対して銀イオン溶液を適応し、かつ長波長紫外線を照射することで水酸化ラジカルが発生するが、細菌、銀イオンもしくは長波長紫外線のいずれかがない場合は水酸化ラジカルが発生しないことが明らかとなった。この技術を生体応用するためには安全性を検証する必要がある。そこで、MC3T3E1細胞に1分間、銀イオン単独もしくは銀イオン+長波長紫外線療法を適用し、細胞毒性を検証したところ、銀イオン+長波長紫外線照射療法は、銀イオン濃度依存的に細胞毒性が増加するが、銀イオン単独群と比較して細胞毒性が増加することはなかった。さらに汚染チタン表面上に銀イオン+長波長紫外線照射を行い、その後細胞を播種したところ、銀イオン+長波長紫外線照射療法群では銀イオン単独処理群や感染後無処理群と比較して有意に細胞親和性が向上した。一方で、石灰化能は銀イオン単独群、非感染処理群と比較して有意差は認められなかった。これらの結果から本治療方法は、汚染されたインプラント表面の殺菌効果だけでなく細胞親和性を回復させることが明らかとなった。これらの結果については国際学術雑誌(scientific reports)で発表した。
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scientific reports
巻: 10 ページ: 8553
10.1038/s41598-020-65411-4.