歯槽骨の吸収は,インプラントや義歯の予後不良因子となるため,歯槽骨再生やその維持が臨床において強く望まれている.研究代表者はこれまで,RANKL結合ペプチドとBMP-2との局所への併用投与が歯槽骨に対して骨形成促進効果を示すこと,抜歯窩に対しては,抜歯後の骨欠損部を早期に骨で満たすことで,周囲の顎堤における骨吸収を抑制することを明らかにした.この副次的効果はメカニカルストレスの関与が推察されたが,歯牙を介した咬合によるメカニカルストレスが骨再生中の顎堤に形態的変化を及ぼすかどうかは明らかになっていない.そこで本研究は,歯槽骨に対しRANKL結合ペプチドによる骨再生を行い,推定されるメカニカルストレスの分布パターンの変化が骨再生中の顎堤の形態に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした.過剰咬合の長期的な影響を解析するために,抜歯を用いた過剰咬合モデルにおける組織学的の解析を行なった.過剰咬合側において,紺分岐部頬側の皮質骨に骨形成促進が認められ,また,根分岐部におけるスクレロスチンの発現低下が認められた.μCT像を用いた有限要素解析についてはモデルの作成を行なったところ,分岐部における力学的歪みは頬側によっている傾向がみられた.さらにPTH全身投与による骨代謝活性化と過剰咬合の相互作用を検証したところ,薬剤投与と咬合の変化との相乗的な効果は骨形成において認められなかった.そのため,咬合力を介したメカニカルストレスは歯根から紺分岐部の歯槽骨を経て頬側に伝播することで,局所における骨造成を促進し骨造成部の骨形態に影響を及ぼす可能性が示唆された.
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