研究課題/領域番号 |
18K17141
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
鈴木 啓之 東京医科歯科大学, 歯学部附属病院, 特任助教 (80801539)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 全部床義歯 / 食事指導 / 運動指導 / フレイル予防 / 要介護予防 |
研究実績の概要 |
無歯顎高齢者においては,栄養状態低下および骨格筋量低下などが進行することに伴う,フレイル・要介護状態は,現在大きな問題となっている.本研究は,無歯顎高齢者に対して,全部床義歯を新製することに加えて,歯科医師による食事指導および運動指導を行うことによる,栄養状態および骨格筋量へどのような影響を及ぼすかを検討すること目的とした介入前後比較試験である. 本研究参加者は,上下全部床義歯新製を希望して本学歯学部附属病院を受診した上下無歯顎高齢者としている.本研究においては,全ての研究参加者に対して,上下全部床義歯新製を行うこととした.さらに,全部床義歯新製期間中に2回,1回20分間からなる,歯科医師による対面式の食事指導と運動指導を受けることとした.本研究のアウトカムは骨格筋量・Skeletal Muscle Mass Index・握力・食品・栄養素摂取量(BDHQ)・栄養状態(MNA-SF)・客観的咀嚼能力評価・口腔関連QoL(OHIP-Edent-J)・義歯に関する主観的評価(PDA)・義歯満足度としている.また,本研究の予定症例数は,40症例としている. 2019年度は,2018年度に本学歯学部倫理審査委員会において承認を得た,研究計画書をもとに本研究参加者のリクルートを開始し,研究参加へ同意の得られた参加者に対する,術前アウトカム測定や,全部床義歯新製開始および食事・運動指導を含む介入を開始した.その結果,2019年度終了時点で,本研究参加への同意を得られた者は23名となり,そのうち,11名の全部床義歯新製および術前・術後アウトカム評価が終了している.さらに,本研究に参加した,全部床義歯装着者14名に対して咀嚼能力と筋肉量や握力との関連についての中間解析を行い,咀嚼能力と握力との間に有意な正の相関がある可能性を関連学会にて報告した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度は,本研究の遂行に対する知見を得ることを目的として,国内外の関連学会に参加した.また,2018年度終了時点で,研究開始に際する本学倫理審査委員会の承認を得ることができたため,2019年度は当初から研究参加者のリクルートが開始できたことにより23名の研究同意を得ることができ,そのうち11名に対しては上下全部床義歯新製および介入前後のアウトカム評価を完了できている. しかしながら,予定症例数が40症例であることを考慮し,本年度においては30症例程度の研究取り込みを行うことを予定していたが,今年度末までに取り込みが完了したのが23名に留まっていることや,2020年始より流行しているCOVID-19の影響により,本学歯科外来および学生外来が閉鎖という状況となり,本学の臨床研究も一時中止となったことを考慮すると,今年度の研究進捗状況にはやや遅れが発生している状況であるといえる.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,研究参加者40名の確保を達成するために,患者リクルートを行っていく予定である.また,2019年度時点で,研究参加への同意が取得でき,研究開始ができた者に対しては,介入後のアウトカム評価を行っていく予定である. 本研究の参加者は,本学歯学部附属病院学生外来を受診している上下無歯顎患者を対象としており,例年,同外来において50症例前後の上下無歯顎者に対して全部床義歯新製が行われていることを考慮すると,次年度以降も研究参加者リクルートが可能であると想定される.しかしながら,現在のCOVID-19流行に伴う,本学歯科外来および学生外来の閉鎖,臨床研究の一時中止という状況を鑑みて,参加者数の確保より確実にするために,リクルートの範囲を学生外来のみから歯学部附属病院義歯外来受診患者にまで拡大することを目的とした修正倫理審査申請を行い,本研究参加者に確保に努めることとする. これらの対策を行いつつ,本学歯科外来および学生外来が再開し,臨床研究の再開の許可がおり次第,研究参加者リクルートの確保につとめ,予定症例数の達成,全部床義歯製作,食事・運動指導の実施,介入前後のアウトカム評価を行っていく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度本学歯学部の倫理審査委員会において研究計画の承認を得ることができていたため,今年度は,実際に研究参加者リクルートや介入を遂行することができ,結果23名に研究参加に対する同意を得ることができた.しかしながら,今年度の研究取り込み目標が30名であったこと,さらにはCOVID-19の流行に伴う本学における臨床研究の一時中止措置に伴い,研究継続が困難な状態となったことにより,今年度予定していた研究遂行に必要な消耗品の購入費用や食品・栄養素摂取量の解析費用などの研究経費が少なくなったことが,次年度使用額が生じた原因である. 今後は,研究参加者リクルートを継続するとともに,研究参加者に対する介入やアウトカム評価を行っていくこととなる.次年度においては,消耗品購入費用やデータ解析費用として適切に使用するとともに,解析結果の発表を目的とした学会参加に対する旅費や成果報告のための論文作成費用などとしても使用していく予定である.
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