本研究は,無歯顎高齢者に対して,全部床義歯を新製することに加えて,歯科医師による食事指導および運動指導を行うことにより,栄養状態および骨格筋量へどのような影響を及ぼすかを検討すること目的とした介入前後比較試験である. 本研究参加者は,上下全部床義歯新製を希望して本学歯学部附属病院を受診した上下無歯顎高齢者としている.本研究においては,全ての研究参加者に対して,上下全部床義歯新製を行うこととした.さらに,全部床義歯新製期間中に2回,1回20分間からなる,歯科医師による対面式の食事指導と運動指導を受けることとした.アウトカムは骨格筋量,SMI,握力,食品・栄養素摂取量(BDHQ),栄養状態(MNA-SF),客観的咀嚼能力評価,口腔関連QoL,義歯に関する主観的評価,義歯満足度とした.また,予定症例数は,40症例とした. 2021年度は,前年度までに研究参加に同意の得られた研究参加者に対する,全部床義歯製作および術前,術後(全部床義歯装着後,調整終了3ヶ月後,6ヶ月後,1年後)のアウトカム測定を実施するとともに,研究参加者リクルートを実施した.その結果,2021年度終了時点において,本研究参加への同意を得られた者は,50名となり,29名の術後アウトカム測定,23名の調整終了3ヶ月後アウトカム測定,12名の調整終了6ヶ月後アウトカム測定,7名の調整終了1年後アウトカム測定が終了した.COVID-19の影響によりドロップアウトが多くなったことから,すべての研究過程を終了できた症例数は想定より大幅に少なくなった.すべての研究過程を終了した7名に対して,解析を行ったところ,栄養摂取量などに有意な経時的変化は認めなかった.この結果は,サンプルサイズが極めて限られた状態での結果であり,本研究の介入効果を明確にするためには,今後も研究を継続しサンプルサイズを増やしていく必要があると考えられた.
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