研究課題
関節リウマチ、変形性関節症、顎関節症などの関節疾患は、代表的な軟骨変性疾患である。これらの疾患で産生が亢進する炎症性サイトカインであるインターロイキン-1βは、これらの疾患の病態に大きく関わることが知られている。我々は、インターロイキンー1βが、一酸化窒素および食細胞型NADPHオキシダーゼ由来の活性酸素の両者に依存して、軟骨細胞の細胞死と細胞外マトリクス分解の促進を誘導することを見出している。昨年度は、関節軟骨が置かれた嫌気的環境下での軟骨細胞の細胞死および誘導型一酸化窒素合成酵素と食細胞型NADPHオキシダーゼの発現に対するインターロイキンー1βの影響を解析し、誘導型一酸化窒素合成酵素の発現は低酸素でもインターロイキンー1βによって誘導されたが、食細胞型NADPHオキシダーゼの発現は、低酸素下では抑制されることが分かった。それに伴って、インターロイキンー1βによる軟骨細胞の細胞死も低酸素下では抑制されていた。食細胞型NADPHオキシダーゼの発現誘導にミトコンドリアの活性酸素産生が関与することが示唆されているので、酸化ストレスにより誘導される抗酸化酵素のひとつであるヘムオキシゲナーゼ-1の発現を調べたところ、好気的な培養条件では、インターロイキン-1β刺激後24時間以内に発現が誘導されたが、嫌気的な条件下では、誘導が起こらなかった。これは、活性酸素産生酵素である、食細胞型NADPHオキシダーゼの発現誘導に活性酸素が関係することを示唆している。さらに、本年度は、関節リウマチで激しく起こる骨吸収の機序を解析するため、破骨細胞の分化の促進因子の研究を進めうることにした。これまでに、関節リウマチの病巣に集積する好中球が破骨細胞分化を促進することを明らかにし、その一部に、好中球エラスターゼが関与することを見出した。
2: おおむね順調に進展している
軟骨組織変性のひとつの要因である軟骨細胞死が酸素分圧の影響を受けることを見出した。関節表層の酸素分圧では、食細胞型NADPHオキシダーゼの発現と細胞死が誘導されるが、軟骨組織深層と同様の酸素分圧では、両者とも抑制されることを明らかにした。このことは、関節軟骨の表層で編成が進行することを説明するものと考えられる。さらに、関節リウマチなどの炎症性骨吸収に好中球が関与することを明らかに出来た。
引き続き、軟骨変性に対する酸素分圧の影響を解析していきたいと考える。また、関節リウマチでは、軟骨変性に加え、破骨細胞による骨破壊が大きな問題となっている。本年度は好中球の関与を見出すことができた。次年度は、軟骨変性および破骨細胞形成に酸化ストレスがどのような影響を与えるかを、抗酸化物質の動態の観点から解析していきたい。
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Bone
巻: 132 ページ: 115216
10.1016/j.bone.2019.11.115216.
http://www10.showa-u.ac.jp/~oralbio/