研究課題/領域番号 |
18K17158
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
秋田 大輔 日本大学, 歯学部, 助教 (00736879)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 脱分化脂肪細胞 / 歯周組織再生 |
研究実績の概要 |
重度の歯周疾患は歯の喪失と高度な歯槽骨吸収を伴うため,欠損補綴時に補綴装置の維持安定が獲得しづらく,機能回復は困難を極める。従来は術者の技術や歯科材料によって対応してきた。近年,疾病や外傷によって損傷をうけた器官・組織に対して機能回復を目指す再生医学が飛躍的に発展し,歯科領域においても口腔機能の向上に対してその有用性が着目されている。口腔内から採取可能な組織は,歯(歯髄と歯根膜),顎骨,骨膜,骨髄,脂肪などがあるが,歯や骨片を含めた骨や骨膜を採取することは患者の侵襲も大きく,細胞源としての有用性は低い。一方で,脂肪組織は腹部のみならず成人の中顔面にも広く存在しており,比較的容易に採取可能な組織であることから再生医療に用いる細胞源として注目されている。脂肪組織中に多量に存在する脂肪細胞は,長年終末分化細胞と考えられてきたが,成熟脂肪細胞から脱分化した細胞は高い増殖能と多分化能を獲得することが明らかにされ,再生医療の新たな細胞源(脱分化脂肪細胞:DFAT)として注目されている。我々はこれまでに成熟脂肪細胞から調整したDFATがラットの歯周組織再生を促進することを報告してきた(Akita D et al., Use of rat mature adipocyte-derived dedifferentiated fat cells as a cell Source for periodontal tissue regeneration. Front Physiol. 2016;7:50.) が,臨床的な見地からの評価はなされていない。そこで本研究では,大動物モデルにおけるDFATの歯周組織再生効果を非臨床的に検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者は以前にゲッチンゲンミニブタの根分岐部に作製した歯周組織欠損部にDFAT細胞を移植して再生効果の検討を行った際に,移植側の欠損部の一部に歯周組織の再生が認められたが,飼育の利便性や扱いやすさ,適齢期の試料体の確保などから使用動物をマイクロミニブタに変更して再生能を検討している。下顎第二小臼歯根分岐部に作製した歯周組織欠損を外科的に作製後,シリコーン印象材で填塞し歯周炎モデルを作製した。4週間後に印象材を除去し,片側(DFAT側)に自家DFAT(1.5x106cells)/コラーゲン複合体を移植し,対側にはコントロールとしてコラーゲンのみを移植し,移植12週間後に下顎骨を摘出した。その結果,DFAT側,コントロール側共に歯周ポケットの改善とアタッチメントレベルの改善が認められ,Control側に比べDFAT側で硬組織の再生がCT上で認められた。さらに,組織学的には、DFAT側において分岐部内にセメント質・歯槽骨様の硬組織とその間隙にコラーゲン線維の再生が認められたことから研究はおおむね順調に進捗していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
移植実験後の実験動物は捕食がやや困難になったものの,重篤な体調不良になった個体は認められなかったことから一連のプロトコールを今後も継続していく予定である。また,移植12週後の両群に第2小臼歯の歯周ポケットの改善とアタッチメントレベルの改善が認められた。さらに,コンピュータ断層(CT)撮影から実験群に著明な硬組織の再生が認められ,組織学的解析から,細胞移植群において分岐部内にセメント質・歯槽骨様の硬組織再生とその間隙にコラーゲン繊維の再生が認められたものの,再生の機序はいまだ不明な点も多く,個体によってややばらつきが認められた。 そのため,今後は試料数の拡充と移植したDFAT細胞の局在部位の解析を行い,最終的に革新的な細胞治療の実用化を促進したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 計画通り使用したところ,端数が生じた。 (使用計画) 次年度使用額と平成31年度助成金を合わせて,当初の計画どおり細胞培養関連,試薬,移植用動物のほか消耗品と国内外の学術大会の旅費および英文校正料などを使用計画として積算している。
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