研究課題/領域番号 |
18K17159
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研究機関 | 鶴見大学 |
研究代表者 |
木原 琢也 鶴見大学, 歯学部, 学部助手 (50796399)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 構造力学的シミュレーション / 有限要素解析 / 補綴装置 |
研究実績の概要 |
補綴装置装着後の長期予後の多くは一定の術式を行った患者群の経過観察から得られる、補綴装置の生存率、破折原因などを調査する臨床研究により検討されている。しかし実際の日常臨床においては、それらのデータが個々の患者に必ずしも適応するとは限らない。口腔内で長期間、機能を維持できる補綴装置の設計・製作を可能とするため、本研究では工学的手法を用いて患者個々の機能的・形態的データ(歯列・歯槽骨・顎関節形態、骨密度、咬合接触、咬合力、下顎運動)を組み込んだ動的有限要素解析による構造力学的シミュレーションを応用した補綴装置の設計最適化システムを構築し、臨床へ応用することを目的とする。2019年度は、歯列形態と咬合力や下顎運動データの統合の自動化を行うため、まずプログラム開発環境(MATLAB)を用いてシリコーンバイトの透過光画像から咬合接触領域の可視化を行うプログラムを開発した。本プログラムではシリコーンバイトの厚さ0~200μmの咬合近接域を抽出することができる。また、抽出した咬合接触画像と咬合力測定装置(T-ScanⅢ)を用いて取得した咬合力分布画像の統合も行うことが可能となった。下顎運動データは6自由度下顎運動測定装置を用いて取得し、レジストレーションジグを用いて歯列形態座標系と統合した。下顎運動データから下顎歯列が上顎歯列へ噛み込むときの運動方向をベクトルで算出し、有限要素解析を行うため境界条件に強制変位を設定した。本年度の研究実績として口腔機能データとして咬合力を歯列咬合面形態に統合する手法と下顎運動を統合する手法を確立し、動的有限要素解析に反映することが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
患者個別の有限要素解析には生体組織を再現した三次元モデルだけではなく、咬合力や下顎運動などの情報が必要である。2019年度では歯列形態と咬合力データや下顎運動データを統合するためのプログラム開発を計画通り行った。T-ScanⅢで取得した咬合力分布画像には縦横の歪みがあったため、咬合接触画像を基準としてシリコーンバイトの咬合面形態の解剖学的特徴点を参考に位置を合わせると同時に画像補正を行うプログラムを組み込むことで問題を解決した。三次元有限要素解析モデルにこれらの口腔機能データを統合することに成功しているため順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後も計画通り、構造力学的シミュレーションに基づく補綴装置デザイニングワークフローの構築と臨床応用を行うため、有限要素解析ソフトウェアを用いた患者モデルの解析を進めていく予定である。これまでに実行してきた生体組織を高精細に再現した有限要素解析モデルの生成と、口腔機能データである咬合力や下顎運動の統合を活用して最終年度の研究課題を進める。また、咬頭傾斜角や咬合高径等の設計パラメータを変化させながら応力分布をフィードバックし、補綴装置をデザイニングするワークフローを確立する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初購入を予定していた物品の価格変動に加え、学内の物品にて代替可能な研究を行ったため、次年度使用額が生じた。次年度では、被験者を対象に有限要素解析モデルを作製し、構造力学的シミュレーションに基づく補綴装置デザイニングワークフローを構築するため、感圧シートや咬合採得用材料等の実験材料や補綴装置製作に用いる切削加工用ディスクやミリングバーに使用する計画である。
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