研究課題/領域番号 |
18K17162
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
纐纈 衆 東北大学, 歯学研究科, 助教 (20806335)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 自己フィブリン |
研究実績の概要 |
自己フィブリン糊は,同種フィブリン糊と比較し凝固に時間がかかるが,より強い接着が得られることが報告されている.また種々の感染症・アレルギーのリスクを回避でき,安価であり,使用領域が拡大している. 当大学輸血細胞治療部の協力のもと,完全自己血フィブリン糊生成および使用に関しては,先行研究にて確立した方法で精製した.貯血した血漿からクリオプレシピテートとトロンビン液を滅菌閉鎖回路内で自動的に調製した. 臨床試用では期待されていた自己血フィブリン糊の安全性,簡便性などのほか,疼痛や瘢痕形成軽減および創部治癒促進などの効果も認められ,自己血フィブリン糊の優れた上皮形成能を示唆する成果であった.自己フィブリン糊の上皮形成能について上皮欠損マウスモデルを用いて評価した.上皮形成能をHE染色および免疫染色にて評価した.免疫組織学的には、Laminin,VEGF,Cytokeratinにて上皮形成および血管新生が確認できた.またMacro評価では上皮の迅速な再生が認められ、自己血フィブリン糊による創部処理は,上皮形成能に優れ,創傷治癒効果を期待できる結果となった. 各種骨補填材料と自己フィブリン糊を組み合わせた,上皮と骨の再生評価については,創部の安定が得らなかった.処理した創部が安定できる環境を調査するとともに、骨欠損と上皮形成の大きさの限界を評価中である.また骨補填材の種類を増やし、自己フィブリンとの相性が良い骨補填材を調査中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では,以下の3つの方法により,自己血フィブリン糊の更なる使用展開および臨床応用につなげる研究をする. (1) 粘膜欠損ラットを用いた,自己血フィブリン糊の処理後粘膜の免疫組織学的評価. (2) 骨露出面における,自己血フィブリン糊の処理後の上皮形成能の評価. (3) 新規骨補填材料と自己血フィブリン糊による処理後の上皮形成能および骨形成能の評価. このうち(1)(2)の実験は上記の通り、評価・発表されている。また(3)については骨補填材料の予備実験は終了・発表されているが、創部の安定が得られず、上皮再生の限界を調査している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の課題は下記の点である。 ・各種骨補填材料と自己フィブリン糊による処理後の上皮形成能および骨形成能の安定した処理法を調査する 当領域では,骨補填材料の開発および使用が盛んに行われている.骨補填材の適応には良好な上皮形成が必要不可欠である.骨補填材上での上皮形成を生体材料で行うことが出来れば,口腔再建の臨床適応は大きく拡大する.その中でも自己フィブリンと組み合わせて使用できる材料を選定し追加実験を行う。 ・自己フィブリン糊によるの上皮形成能の限界を調査する 上皮形成能があることは証明されたが、その限界を評価することで正しい臨床展開につながると考える。上皮欠損・骨欠損モデルマウスを用い、再生能の限界を評価することが必要である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初購入を予定していた、免疫染色キットの購入費が少なく済んだため。また新型コロナウイルスの世界的な拡大のため、学会参加費、旅費が少額であった。
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