研究課題/領域番号 |
18K17171
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
奥山 紘平 長崎大学, 病院(歯学系), 助教 (30781968)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 口腔がん / Cetuximab / Fucci system / 細胞周期 / G1期 / 放射線増感 / 抗腫瘍薬 |
研究実績の概要 |
近年、頭頸部癌に対し、腫瘍細胞のEGFRを標的とした分子標的治療薬Cetuximab(C-mab) が導入されている。C-mabによる5年生存率の改善が認められ放射線併用療法においても有効な治療成績が得られている。しかし、in vitroやin vivoによるその細胞周期動態に及ぼす影響や放射線増感効果について詳細に検証されていない。これまで、申請者は細胞周期を生きたままリアルタイムに可視化できるインディケータFucciを導入したSAS細胞(舌癌由来)を用い、C-mabの暴露後の細胞周期動態を解析した結果、数日をかけてG1期にアレストが生じ、細胞増殖阻害効果が得られることを見出した。本研究では、SAS-Fucci細胞を用い、細胞増殖阻害効果のメカニズムを解明し、放射線増感効果を獲得するための条件・因子を特定する。さらに得られた知見から細胞周期を標的とする抗腫瘍薬のうち、理論的に併用が有用な薬剤を併用し、有効なレジメンを実証・提案し、C-mabを用いた放射線増感治療戦略に非常に有用な知見をもたらすことが期待される。 平成30年度は、G1期に同調したSAS-Fucci細胞の発現タンパクの同定に長時間を充てたが、その後の実験の取っ掛かりとなるキータンパクの同定には至らなかった。その理由として、C-mab処理後、細胞増殖変化が現れるまでに長時間を要す他、その間のどの時点での細胞を採取するかを決定するために、多くのパターンの試料の観察が必要であった。その結果、細胞周期動態の変化が現れ始めるC-mab処理5日目の細胞を今後の実験解析に使用予定するとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成30年度は、1.G1期に同調したSAS-Fucci細胞の発現タンパク解析とDouble strand break (DSB)修復経路の特定、2.放射線照射のタイミングの検証、3.C-mabと微小管重合阻害薬(cf.KPU-300)を併用した場合の細胞周期動態解析の三項目について検証を行うことを目標としていた。昨年度は1の発現タンパクの抽出に長時間を充てたが、その後の実験(2および3)の取っ掛かりとなるキータンパクの同定には至らなかった。その理由として、C-mab処理後、細胞増殖変化が現れるまでに10日程度を要し、その間のどの時点での細胞を使用するかを決定するために、多くのパターンの試料の観察が必要であった。その結果、細胞周期動態の変化が現れ始めるC-mab処理5日目の細胞を今後の実験解析に使用する予定とした。 その他、所属施設の変更が確実であったため、実験準備や器材確保などに滞りが生じ、まとまった研究・実験に充てる時間の確保が困難であったことが主な理由に挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き長崎大学原爆後障害医療研究所放射線リスク制御部門放射線災害医療学研究分野鈴木啓司准教授との共同研究を行い、研究を進めていく方針である。すなわち、実験データの収集を上施設にて行い、データ解析やまとめ、学会発表準備、論文作成等を東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科顎口腔外科学分野において行う方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究費を効率的に使用した結果、少額は翌年度へ持ち越しとなった。この金額は実験器材、試薬、その他の物品や旅費、英文校正料や論文投稿料に充てる予定である。
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