骨髄環境が、癌の再発転移に大きく関連する癌の休眠状態や治療耐性(抗癌剤耐性、放射線治療耐性)に大きく関わっていることを解明するために、骨髄嗜好株であるBM-DTC株及び肺嗜好株であるLu-DTC株の2株を作製し、それらと原発巣由来株を合わせた3株を用いて解析を行った。マイクロアレイ解析 を行った結果、BM-DTC株 においては、他の2株と大きく異なる発現プロファイルを示すことを見出した。 また骨髄環境が骨髄播種癌細胞の抗癌剤耐性に大きく関与することが判明したため、次に放射線耐性について検討した。その結果3株において有意な放射線耐性の差は認めなかった。細胞自体の特異的性質だけではなく、環境因子などが関与している可能性が考えられた。次に、BM-DTC内のクローンの隔たりの有無を検討した。各細胞株をDNAバーコードライブラリーで標識して、マウスに移植したあとに、各臓器(移植腫瘍、骨髄、肺、末梢血)からゲノムDNAを抽出し、 次世代シークエンサーにてバーコード配列の内訳の解析を行った。結果としてクローン分布を検討したところ、肺と末梢血のクローン分布は近似していた一方で、骨髄由来クローンはそれらとは異なる特有の分布を示した。これらのクローンが骨髄での長期生存に適したクローンである可能性を考えている。 次にシングルセルクローン解析を行ったところ、骨髄で突出して優勢なクローンを同定することができた。このクローンは移植巣ではほとんど存在しない稀なクローンであるということが判明した。骨髄に播種されやすい特有の性質を持つ癌細胞の存在が考えられた。今後この骨髄において特異的なクローンを解析することによって、骨髄での休眠潜伏を引き起こす癌細胞の分子マーカーや治療標的の開発に関与するのではないかと考えている。
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