研究課題
痛みを伴う病態の多くは,炎症性疼痛に代表される侵害受容性疼痛である。その発生や調節機構の一つとして,ATPを介した細胞内・細胞間コミュニケーションが示唆されている.一次求心性神経(特に三叉神経系)におけるこれらの放出路やその分子実体についての詳細は未だ不明であり,ATPがどのような細胞間シグナル,また膜輸送機構を経て細胞外に放出されるかについては,結論付けられていない.本研究は,三叉神経系におけるATP受容体を介したこれらの細胞内・細胞間コミュニケーションの詳細について網羅的に検索することで,ATPを介した侵害受容機構を明らかにし,炎症性疼痛のメカニズムを解明することである.炎症や細胞障害が起こると,細胞内から細胞外へATPが漏出される.この細胞外ATP( [ATP]o )は,細胞膜上に存在するATP受容体に結合する.ATP受容体にはイオンチャネル型であるP2X受容体と,Gタンパク共役型であるP2Y受容体に大別され,P2X受容体はさらに,1 - 7のサブタイプに細分される.なかでもP2X7受容体は高濃度 [ATP]oにより活性化することが知られている.本研究において、高濃度 [ATP]oやBz-ATPに対して二相性内向き電流を示したことから,ラット三叉神経節細胞にはP2X7受容体が機能的発現を示すことが示唆された.Bz-ATP誘発性二相性内向き電流における2nd componentをPanx-1チャネル阻害薬とATP分解酵素が抑制したことから,三叉神経節細胞におけるP2X7受容体は、高濃度[ATP]oによってPanx-1チャネルを介したautocrineを示し,炎症や細胞障害の発生や調節に関与する可能性が示唆された.
2: おおむね順調に進展している
本研究は三叉神経におけるATPを介した細胞内もしくは細胞間コミュニケーションを明らかにすることで、炎症性疼痛のメカニズムを解明することである。本研究はこれまでに、三叉神経節細胞におけるP2X7受容体の自己調節機構を明らかにした。
本研究は三叉神経におけるATPを介した細胞内もしくは細胞間コミュニケーションを明らかにすることで、炎症性疼痛のメカニズムを解明することである。本研究はこれまでに、三叉神経節細胞におけるP2X7受容体の自己調節機構を明らかにした。今後は、この自己調節機構のさらなる解明と、P2X7受容体活性化のトリガーとなる要因について検索を進める予定である。
研究所属機関の変更により、支出内容に変更が生じたため。
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歯科麻酔学会雑誌
巻: 47 ページ: 10-12
https://doi.org/10.24569/jjdsa.47.1_10
http://www.kdu.ac.jp/dental/outline/info/staff_grad_004.html