研究課題/領域番号 |
18K17189
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
阿部 陽子 東北大学, 歯学研究科, 大学院非常勤講師 (90431593)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 顎矯正手術 / 骨代謝活性 |
研究実績の概要 |
手術侵襲や骨折後の骨治癒過程において、局所的に代謝活性が亢進するRegional acceleratory phenomenon(RAP)と全身的に活性が亢進するSystemic acceleratory phenomenon(SAP)が知られている。また、ヒト末梢血中に存在するCirculating osteoblast-lineage cells (Circulating osteogenic progenitor cells: COP細胞)はosteocalcin (OCN)陽性などの特徴を有し, 成長期と骨折時に増加し, in vivo/vitroで骨形成能を有することが報告されており、この細胞が顎矯正手術時の骨治癒過程に関与するかどうかについては不明であった。 前年度にはヒトの顎矯正手術後の血液サンプルを解析し、骨治癒過程の各ステップ(術後炎症、骨吸収、骨形成時期)において、全身性に骨代謝活性が亢進することを確認しその成果報告をおこなった。 今年度はさらに臨床サンプル数を増やす予定であったが、コロナウィルス感染拡大により手術制限がかかりサンプル採取を実施できなかった。しかしながら基礎研究として、ラットに下顎枝垂直骨切術を施行し術後の局所および全身性骨代謝亢進を調べる動物実験にとりかかった。東北大学動物実験専門委員会の承認を得て、予備実験を施行した。週齢15週のSDマウスを用い骨切術を施行しマイクロCTや組織切片を用いて骨代謝亢進を局所全身で評価することにした。しかし予備実験でマウスに両側の骨切術を施行すると負荷がかかりすぎることが分かり、手術群は片側のみ骨切術を施行するよう変更した。現在本実験に取り掛かるところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
コロナウィルス感染拡大により活動制限がかかり、病院の手術制限と大幅な予定変更があり臨床サンプル数を増やすことができなかった。また動物実験を予定通り進めることができなかった。その結果学会活動も制限され、情報収集も進まなかった。
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今後の研究の推進方策 |
基礎研究としての動物実験(本実験)を主軸とし、開始する。 15週齢Sqraque-Dawley ratを用い、コントロール群、SHAM群、下顎枝垂直骨切(VRO)群に分ける。手術群では左下顎枝を皮膚から切開し下顎切痕から下顎下縁まで骨切りを行い、プレート・スクリューで固定し縫合する。SHAM群では切開は手術群と同様だが骨切りは行わず下顎枝にプレート・スクリュー固定のみ行う。21週で屠殺するが、その際採血を行い骨代謝活性マーカーについて群間で比較する。それぞれの群の、上下顎骨、脛骨、大腿骨、椎骨についてマイクロCTで形態、Bone mineraldensity、Moment、組織容量、骨梁を計測する。また組織標本を作製し、軟骨層の厚さ、軟骨層および軟骨下骨形態についても評価し骨代謝活性マーカーの発現を比較する。さらに組織からTotal RNAを抽出し、遺伝子発現解析を行う予定である。 臨床研究は臨床の稼働状況を見ながらサンプル数を増やしたい。血清中サイトカイン(IL-1, IL-6, IL-10,TNF-αなど)やタンパク質(SDF-1やBMP-2など)の発現について測定・解析予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルス感染拡大に伴い、研究活動に制限がかかり、特例として年度できなかった活動を来年度に延期する申請を行い、許可された。繰り越し金額に限りはあるが、可能な限り前述した今後の研究方策にのっとって研究を進めるべく実験資材の購入や研究発表に使用する予定である。
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