研究課題/領域番号 |
18K17191
|
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
小池 一幸 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (10618060)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | EGFR分子標的治療薬 / ゲフィチニブ / エルロチニブ / セツキシマブ / パニツムマブ / 皮膚障害 / 心障害 |
研究実績の概要 |
癌に対して、現在4種類(ゲフィチニブ、エルロチニブ、セツキシマブ、パニツムマブ)のEGFRに対する分子標的治療薬が用いられ、その有効性が高く評価されている。一方、皮膚症状、心障害などが高頻度に起こり、治療の妨げとなっている。副作用を抑制できれば他の抗癌剤よりも、はるかに良好な予後(生存期間の延長、社会復帰など)が得られるものと考えられるが、一般には、正常上皮にも豊富に存在するEGFRを分子標的とするため、これらの障害が起こることは当然であり、現在まで、抗腫瘍効果を維持したまま副作用を抑制する治療法はあり得ないと考えられてきた。 本研究では、この常識とも言える一般的見解を根底から覆し、皮膚症状や心毒性を抑制し、なおかつ抗腫瘍効果は維持あるいは増強する治療法(治療薬)の開発を目的とし、以下の成果を上げた。 1)遺伝子パスウェイ解析ソフトを用いて、EGFR分子標的治療薬の抗腫瘍効果を発現する遺伝子カスケード、合併症を発症する皮膚障害カスケード、心障害カスケードを同定した。 2)扁平上皮癌細胞培養系、皮膚上皮細胞培養系、ヒト胎児腎細胞培養系を用いて、同定した抗腫瘍効果カスケード、皮膚障害カスケード、心毒性カスケードを候補遺伝子が担っていることを確認した。 3)抗腫瘍効果を減弱せずに各合併症を引き起こさない遺伝子パスウェイの分岐点が存在することを明らかにした。 4)その分岐点の下流で、皮膚障害カスケードのみ、心障害カスケードのみを阻害する候補薬剤を同定した。 5)候補薬剤に関して、各分子標的治療薬の抗腫瘍効果を減弱しないことを、抗腫瘍効果を担っている遺伝子カスケードの発現状態により検証した。 現在、候補薬剤に関して各分子標的治療薬の皮膚障害カスケード、心障害カスケードを抑制することができるかを実験中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MTS assayにて各種のEGFRに対する分子標的治療薬の抗腫瘍効果を検証し、濃度依存的な細胞生存率の低下を認めた。また、候補カスケードの各遺伝子の発現状態を確認し、抗腫瘍効果を候補カスケードが担っていることが確認できた。また、皮膚上皮細胞の培養系にて各分子標的治療薬を作用させると皮膚障害効果を確認され、その候補カスケードの各遺伝子の発現状態を検証したところ、皮膚障害効果を候補カスケードが担っていることが分かった。これまでの研究成果は、次年度以降の研究計画に大きく寄与できる内容であり、順調に進展していると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
現在、候補薬剤に関して各分子標的治療薬の皮膚障害カスケード、心障害カスケードを抑制することができるかを実験中である。今後は、候補薬剤が各分子標的治療薬の抗腫瘍効果を減弱せずに、皮膚障害、心障害を抑制できるかどうかに関して、担癌マウスを用いた実験、皮膚上皮細胞を用いた細胞生存率解析、ヒト胎児腎細胞培養を用いたマグネシウムの定量等により詳細に検証していく予定である。
|