研究課題/領域番号 |
18K17193
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
五十嵐 正樹 東京大学, 医学部附属病院, 登録研究員 (40769577)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 脂肪組織由来間葉系幹細胞 / フローサイトメーター / AI |
研究実績の概要 |
顎顔面領域における先天異常、外傷や外科手術後の骨欠損に対して、自己細胞や組織を用いた移植医療などの再生医療が臨床応用されつつある。しかし、外科的侵襲や感染などのリスク、培養による細胞脱分化による品質の低下、移植後の免疫応答などの問題があるため実用化へのハードルは高い。近年、脂肪組織から高効率で多能性などの幹細胞様特性を有する間葉系間質細胞(ASC)を分離する技術が開発されたことから、成熟細胞や組織に依存しない新たな移植医療への可能性が示唆されている。現在、臨床導入に向けた研究で広く用いられている、いわゆる幹細胞とは、一部幹細胞を含んでいるものの、多くが間質細胞であるため、幹細胞を純化するためには多くの特異的表面マーカーを用いてFACSなどの特殊な機械により分離する必要がある。しかし、分離するための操作の煩雑性に加え、専門的な技術を要す。また、分離時の刺激による細胞生存性への影響も排除できない。本研究では、極最近開発され、染色することなく光学的な分析により目的細胞を分離可能とする機械学習駆動型フローサイトメーターに着眼し、この機械を用いて、ASC分離における従来法との有用性を比較検証することで、ASCを含め、分離操作が複雑なあらゆる間葉系幹細胞を簡便に分離することを目的とし、将来的な再生医療研究の発展に寄与することである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サイトメーターの仕様設定として、本研究で使用するハイコンテンツフローサイトメーターは流路を通過する細胞の信号強度から細胞サイズを推測し、形態的特徴を再構築することで、非染色にて特定細胞を篩い分けることが可能となる。しかし、目的とする細胞の形態情報が分からなければ、特定することができないため、初めに、目的とする細胞の情報をあらかじめ、フローサイトメーターに記憶、学習させる必要がある。したがって、ASCでの評価をおこなう前に、すでに細胞情報が判明している市販の軟骨細胞や骨芽細胞など既知の間葉系細胞をコントロールとして、あらかじめフローサイトメーターに学習させるために、小耳症患者の余剰耳介組織を採取し、細胞単離し培養を行い、このヒト細胞とマウスの耳介組織由来の軟骨細胞および骨髄由来の骨芽細胞を調整した。 次に、マウス由来の軟骨細胞や骨芽細胞を当該機械で市販のマウス軟骨細胞と骨芽細胞と同様の信号強度なるように調節をおこなったのち分離し、市販の細胞と差がないことを確認する作業を行っている。併行して、脂肪組織由来間葉系幹細胞(ASC)でも分離可能かを検証するため、マウスおよびヒト脂肪組織よりASCを単離し、代表的なASCマーカーの発現を確認している。
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今後の研究の推進方策 |
ASC分離を基にしたサイトメーター性能評価を実施後、in vitroにおけるASC特性の検証を行う。その結果から、本法にて分離したASCの細胞特性を従来法と比較検証する。In vitroにて、各法で分離した細胞のコロニー形成能評価としてCFU-F assayを、多能性評価として、骨、軟骨、脂肪分化誘導をおこない、従来法と同等あるいはそれ以上であることを確認する。 次に、マウス頭蓋骨欠損モデルを用いたin vivoにおけるASC骨分化性能の検証を行う。 最後に、本法で分離取得した細胞の有用性評価として、in vivoでの分化性能評価をおこなう。マウス左右側頭骨にφ5 mmの骨欠損を作製し、本法と従来法で分離取得したASCを5μg/mL BMP-2を含有したアテロコラーゲンスポンジに搭載し、欠損部へ移植する。移植後4週、8週で摘出し、μ-CT、DEXA (現有)にて形態計測学的に、移植片を組織学的に評価し、骨形成能の違いを検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
【理由】初年度の動物実験が効率よく進められたことと、次年度はASCの特性評価として、ハイコンテンツサイトメーターと従来のフローサイトメーターの比較を行うため、抗体やELISAキットを用いて詳細に検討する。加えて、マウス頭蓋骨欠損モデルを作製し、ASCの分化特性を詳細に評価するため、動物実験の数を増やすため、初年度よりも予算を消費する予定である。 【使用計画】代表的なASCマーカーであるCD31, CD34, CD45陰性、CD90, CD105を用いて、ハイコンテンツサイトメーターと従来のフローサイトメーターで分取したASCの特性を比較する。 頭蓋骨欠損モデルを作製し、アテロコラーゲンスポンジ、β-TCP、リコンビナントコラーゲンペプチドなど生分解性材料との相性および比較を行う。
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