本研究は、血小板溶解液-フィブリン複合体(Platelet Lysate with Fibrin: PLF)を用いた同種移植による組織再生法の開発とその有用性を明らかにすることを目的とする。 研究代表者が行った先行研究において、多血小板血漿(Platelet Rich Plasma: PRP)は、凍結乾燥処理を施してもその活性を失わないことから、PRPの骨再生促進作用の主体は血小板に含まれる成長因子およびフィブリンネットワークであることが示唆された。一方、PRP中の白血球分画に含まれるプロテアーゼが血小板活性の低下を引き起こすことが知られており、白血球を除去することにより、より高い組織再生作用を期待できる。また、白血球は抗原提示にも強く関与するため、これを除去することで免疫反応を抑制でき、同種移植が可能になると考えられた。 令和元年度においては、平成30年度に施行したPLFの調製法に関して検討を継続した。その上でPLFを骨補填材であるβ-TCPと混和させて移植担体とし、ヌードマウス頭蓋骨膜下移植モデルに対して移植実験を行い、その骨再生能をPRPを用いた群と比較を行った。また、PLFを凍結乾燥処理したFD-PLF(Freeze Dried PLF)に関しても同様に実験を行った。現在、ドナー数を増やして実験中および解析中である。 また、PLFの骨芽細胞増殖・分化能の検討およびFD-PLFの保存期間の検討も現在進行中である。
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