研究課題/領域番号 |
18K17203
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
杉浦 圭 横浜市立大学, 医学研究科, 共同研究員 (50771086)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 口腔癌 / リンパ節転移 |
研究実績の概要 |
口腔癌のリンパ節転移は重要な予後規定因子である。リンパ節転移を制御することで予後の改善が期待されるが、リンパ節転移の分子メカニズムは明らかになっていない部分が多く、患者の予後改善のために克服すべき治療課題である。本研究では、実際に患者の口腔癌細胞をマウスへ同所移植を行うPatient-derived-xenograft(PDX)同所移植モデルを確立し、癌本来の微小環境が再現された状態の同モデルを用いて口腔がんのリンパ節転移のメカニズムの解明に取り組んでいる。 口腔癌患者において生検で採取した腫瘍検体を免疫不全マウスであるNOGマウスの舌側縁へ外科的に移植した。腫瘍細胞は微小環境を保存するためになるべく新鮮な状態で行っている。同移植モデルでは腫瘍細胞の増殖が認められ、また時系列にてマウスの舌腫瘍の増大を舌の視認及びサイズ測定により経過観察した。 本年度はその組織の状態を検体採取、種々の染色を行い微小環境の状態を観察を継続している。まだ検体採取し観察中であるが、患者の口腔癌組織は一部構造を維持した状態でNOGマウスの舌で定着、増殖の所見を得られている。組織の染色に関してはリンパ管の代表的タンパクであるLYVE-1や血管系のCD31、に加え血球系細胞のマーカーであるCD11bなどのマーカーを追加し微小環境の経時的変化の観察を行った。本年度はさらにPDXモデルの舌腫瘍部分切除モデルを作成し、転移促進メカニズムの解析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
PDXモデルの作成において、舌腫瘍の移植後における腫瘍の定着不良が見られており、原因として患者口腔癌からの生検検体の一部を採取した際の移植までの時間や採取部位依存による腫瘍細胞の活性の違いなど考えられる。患者からの切除時の手技は同一実験者が行っているが、癌細胞は単一組織ではなく様々な状態の細胞組織が混在しているため、組織採取時の組織へのストレスやヒト口腔内細菌の除去を洗浄、抗菌薬を用いた後に移植を行うため同手技における細胞活性の低下も考えられる。上記に加え、採取検体はマウス舌における腫瘍であるため検体自体が小さく貴重であり、免疫染色などにおける条件検討が進 みにくいことも遅延因子の一つである。
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今後の研究の推進方策 |
今後臨床と研究の時間的、手技的ギャップをこれまでより縮め、手技の改善を行うことにより生着率の向上を目指し、モデル作成の数を増やし、実験を推進していく。生着率の向上をしたのちPDXモデルの舌部分切除モデルを確立し、同マウスにおける舌腫瘍部及び頸部リンパ節の組織採取を行い、舌腫瘍原発部位および頸部リンパ節転移への影響を検討していく。そして、癌細胞はヒトによりそれぞれ性質が異なっていると考えられることから、予想ではPDXモデルマウスの中でも転移しやすい癌細胞とそうではない腫癌細胞に分類できてくるのではないかと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
PDXモデルにおける腫瘍細胞の定着不良により、それに伴って動物購入などの経費が予想より少なかったからであると考える。次年度には同モデルの腫瘍組織の定着改善を目指すことにより、検体の採取を進め、免疫染色などの解析が進んでいく予定である。
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