口腔癌のリンパ節転移は重要な予後規定因子である。リンパ節転移を制御することで予後改善が期待されるが、リンパ節転移の分子メカニズムは明らかになっていない部分が多く、患者の予後改善のために克服すべき治療課題である。本研究では、実際に患者の口腔癌細胞をマウスへ同所移植を行うPatient-derived- xenograft(PDX)同所移植モデルを確立し、癌本来の微小環境が再現された状態の同モデルを用いて口腔がんのリンパ節転移のメカニズムの解明に取り組んだ. 口腔癌患者において生検で採取した腫瘍検体を免疫不全マウスであるNOGマウスの舌側縁へ外科的に移植した。腫瘍細胞は微小環境を保存するためになるべく新鮮な状態で行っている。同所移植モデルでは腫瘍細胞の増殖が認められ、また経時的にマウスの舌腫瘍の増大を舌の視認及びサイズ測定により経過観察した。 2021年度はその組織の状態を検体採取、種々の染色を行い微小環境の状態を観察を継続している。まだ検体採取し観察中であるが、患者の口腔癌組織は一部構造を 維持した状態でNOGマウスの舌で定着、増殖の所見を得られている。組織の染色に関してはリンパ管の代表的タンパクであるLYVE-1や血管系のCD31、に加え血球 系細胞のマーカーであるCD11bなどのマーカーを追加し微小環境の経時的変化の観察を行った。さらにPDXモデルの舌腫瘍部分切除モデルを試み、転移促進メカニズムの解析を行ったが,患者より採取した口腔癌組織のPDXモデルへの生着率が既存の口腔癌細胞株に比べ低く実験の遂行に関してネックとなっていたが,その後改善を図ってきた。
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