研究実績の概要 |
MRONJラットに対するテリパラチド(TPTD)投与の動物実験では、下顎骨・大腿骨の両方で、生理食塩水群において穿孔部の皮質骨には新生骨が見られず骨壊死が確認できた。TPTD投与群では、一部壊死骨が認められたが、穿孔部には新生骨が確認できた。下顎骨・大腿骨ともにTPTD投与により新生骨の増加と壊死骨の減少が確認でき、いずれの差も統計学的に有意であった。カルセイン2重標識を行った非脱灰標本では、下顎骨、大腿骨ともに、TPTD投与によって骨のリモデリングが、有意に活性化されていることが確認できた。非脱灰標本に対してVillanueva骨染色を行い、下顎骨・大腿骨共にTPTD投与によって破骨細胞数の有意な増加が認められた。血清中のRANKL,OC,CTXの濃度は,いずれもTPTD投与によって有意に増加しており,破骨細胞分化因子,骨形成マーカー,骨吸収マーカーが共に増加したことが確認できた。 これらにより、今回のBRONモデルラットでも,下顎骨・大腿骨ともに有意な新生骨形成の増加が認められたことは、骨粗鬆症モデルラットへのTPTDの間欠的投与により、骨芽細胞が活性化され、新生骨の形成を促進させる、過去の報告を支持するものであった。また、TPTD投与による壊死骨面積の減少および破骨細胞数の増加、RANKLとCTXの上昇から、MRONJによって形成された壊死骨が、破骨細胞により吸収されたことが推察された。 MRONJに対するTPTD療法は、骨芽細胞による新生骨形成の促進だけでなく、破骨細胞の活性化による壊死骨の吸収よって、治療効果を発揮する可能性が示された。 これらは、MRONJに対するTPTDの有用性を示しただけでなく、破骨細胞の壊死骨吸収の促進が一因である可能性を示した画期的な報告であったと考える。
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