研究課題/領域番号 |
18K17211
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研究機関 | 朝日大学 |
研究代表者 |
後藤 隆志 朝日大学, 歯学部, 講師 (30637898)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | トラマドール塩酸塩 / 術後鎮痛 / 悪心・嘔吐 |
研究実績の概要 |
本研究でのトラマドールの投与経路は適応外使用であり特定臨床研究に該当する。そのため、患者にトラマドールを投与する前にトラマドール静脈内投与の安全性や副作用を評価することを目的として簡易的な第1相試験を行うこととした。 健康成人男性ボランティア6名を対象とした。トラマドール塩酸塩投与前に簡易動的平衡機能試験としてTimed Up & Go test(TUG)や重心動揺検査を、精神運動機能試験としてDigit symbol substitution test(DSS)を、他覚的眠気度調査としてStanford sleepiness scale(SSS)およびOAA/Sスコアの評価を行った。その後、モニター(血圧計、心電図、パルスオキシメータ、BISモニタ、カプノメータ)を装着し、コントロール値を記録した後に24G留置針にて静脈路を確保した。トラマドールの投与量は2.0 mg/kgとした。トラマドール投与15分後、30分後、60分後、2時間後、3時間後に血圧、心拍数、SpO2、呼吸回数、ETCO2、BIS値を記録した。また、投与60分から180分後までの1時間毎にTUG、DSS、重心動揺検査、SSS、OAA/Sスコアの評価を行った。特に帰宅判定に関わる項目を重視して観察を行いデータ採取を終了、帰宅とした。また、翌日にアンケートを行い帰宅後の状態の聴取も行った。 トラマドール投与後、BIS値および意識レベルは低下したが、その他の項目に有意な変化は認められたなかった。副作用として悪心が被験者の100%に生じたが嘔吐するものはいなかった。悪心の出現率が高かったため臨床試験は3名までとした。 トラマドール2.0mg/kgの静脈内投与後の回復過程を観察したところ副作用として悪心は生じるが、口腔外科手術のDay surgeryや静脈麻酔にトラマドール静脈内投与は安全に使用できると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
トラマドール2.0mg/kgの投与において、すべての被験者において悪心が認められた。そのため、投与量や投与速度を変更してデータ採取を行う必要があると考えられた。また、本研究は特定臨床研究にあたるため臨床研究審査委員会での承認、jRCTへの登録を行う必要性がある。そこで、現在、東京大学医学部附属病院臨床研究支援センターの支援を受け、研究プロトコールの改定や臨床研究審査委員会で使用する書類の作成を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
現在、本研究ではトラマドール静脈内投与において副作用の悪心・嘔吐の出現が課題となっている。過去の我々の報告においても(日歯麻誌, 2015, 43(2), 271-273)、トラマドール1.8mg/kgを静注した結果、疼痛管理は良好であったが副作用として悪心・嘔吐が長時間に渡って認められた症例を報告した。そのため、現在行なっている第1相試験では、トラマドールの用法用量を変更して、投与量や投与速度の違いが副作用出現率にどのような関係を及ぼすかを検討することとする。トラマドールの緩徐投与では、急速投与よりも副作用(悪心・嘔吐)の出現率が低いとの報告があるため、本研究においても急速投与群と緩徐投与群に分けてデータ採取することとする。 トラマドールの用法用量は、A群:1.0mg/kgを単回投与、B群:1.5mg/kgを単回投与、C群:2.0mg/kgを単回投与、D群:1.0mg/kgを30分かけて投与、E群:1.5mg/kgを30分かけて投与、F群:2.0mg/kgを30分かけて投与として、各群6名ずつ(計36名)のデータを採取することとする。A、B、C群ではトラマドールを急速投与して、コントロールとして生理食塩水をシリンジポンプを使用して緩徐投与する。D、E、F群のトラマドールの投与はシリンジポンプを使用して緩徐投与を行い、生理食塩水を急速投与する。トラマドール投与15分後、30分後、60分後、2時間後、3時間後に血圧、心拍数、SpO2、呼吸回数、ETCO2、BIS値を記録する。また、投与60分から180分後までの1時間毎にTUG、DSS、重心動揺検査、SSS、OAA/Sスコアの評価を行う。特に帰宅判定に関わる項目を重視して観察を行いデータ採取終了、帰宅とする。また、翌日にアンケートを行い帰宅後の状態の聴取を行う。 その後、第2相試験(探索的試験)を行い術後鎮痛効果を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究は臨床研究法の特定臨床研究にあたり、2019年度より厚生労働大臣認定臨床研究審査委員会の承認およびjRCTへの登録が必要となる。現在、その審査手続き中であり、東京大学医学部附属病院臨床研究支援センターでのプロトコールおよび書類の整備に202,176円、東京大学臨床審査委員会の審査手数料として300,000円、その他交通費として使用予定である。
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