研究課題/領域番号 |
18K17215
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
武田 裕利 東北大学, 大学病院, 助教 (60806339)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | Pd特異的TCR遺伝子導入マウス |
研究実績の概要 |
申請者はパラジウム(Pd)に反応する病原性T細胞に着目し、金属アレルギーにおける抗原提示の分子機構を明らかにすることを目的とし、本研究を遂行するために、申請者が特定したPdアレルギー特異的なTCRαを用いて遺伝子導入細胞株および遺伝子導入マウスを作製することとした。これまでの研究において発現ベクターにPd特異的TCRの塩基配列をライゲーションした。発現ベクターには正確にライゲーションできていることを確認していた。「TCRα-β-細胞株にウイルスベクターを用いて遺伝子導入する」という目標に対して、これまでの研究で同定したPd特異的TCRα鎖塩基配列を遺伝子導入し、セルソーターで回収した遺伝子導入細胞を蛍光顕微鏡で確認した。これで、現在Pd特異的TCRα鎖塩基配列を遺伝子導入細胞を作製した。次にPd特異的TCR遺伝子導入マウスを作製し、現在研究に使用できる世代まで交配を進めている。これまでにヒトの金属アレルギー特異的TCR遺伝子導入細胞を用いたin vitroでの研究はみられるものの、ヒトでは過去に多種金属に曝露されていることなどから過去に同定された金属アレルギー特異的TCRということについて議論の余地がある。そのため今回マウスを用いた単一の金属に曝露されたPd特異的TCRを発現した遺伝子導入細胞を用いてin vitroでの研究を行うことでより詳細なメカニズムや抗原提示状況の更なる解明へ繋がると考えている。またPd特異的TCR遺伝子導入マウスを構築することにより、金属高感受性マウスとして、金属材料安全性試験の確立に役立つことやin vivoでの金属アレルギー発症のメカニズムを解明できること考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者はすでにPdアレルギー特異的なTCRα鎖の特定を行っており、昨年度は申請者が設定した6ステップの実験計画のうち、1.「 Pd特異的TCR鎖の塩基配列をPCRで増幅する」、2. 「GFPなどを組込んだベクターにPCR産物をライゲーションする」、3. 「ライゲーション後のPd特異的TCRの塩基配列をシークエンサーで確認する」、まで進んだ。正確にライゲーションできていることを確認した。今年度は4.「TCRα-β-細胞株にウイルスベクターを用いて遺伝子導入する」まで進んだ。今年度はα鎖のみ遺伝子導入を行うことができた。β鎖に関しては特異的TCRといえるものが複数あり、これらの候補を今後導入していく予定である。次にPd特異的TCR遺伝子導入マウスの作製については5ステップの実験計画のうち、昨年度は1. 「クローニングベクターからPd特異的TCRの塩基配列を取り出す、2. 「発現ベクターにPd特異的TCRの塩基配列をライゲーションする」ことまで進んだ。今年度は、3. 「Pd特異的TCR遺伝子導入マウスを作製する」、4. 「Pd特異的TCR遺伝子導入マウスの飼育・維持」まで進んだ。現在は実験に使用できる世代まで交配を続けている段階である。次世代が産まれたら、固体からPCR精査を行い、確実にPd特異的TCRα鎖が発現しているものを交配しており、交配に長期間を要している。今後は実験計画に沿って研究を進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進としては、設定した実験計画に従って、研究を進めていく。具体的にはPd特異的TCR遺伝子導入細胞株の樹立に関しては6ステップの実験計画のうち、4. 「TCRα-β-細胞株にウイルスベクターを用いて遺伝子導入する」、5. 「Pd特異的TCR遺伝子導入細胞をセルソーターで回収し、蛍光顕微鏡で確認する」のこの作業をPd特異的 TCRβ鎖の候補を用いて行い、α鎖、β鎖の両方を導入した遺伝子導入細胞を作製する。次に6. この遺伝子導入細胞とPd処理した抗原提示細胞を共培養し、サイトカイン産生やT細胞の活性化、より詳細な抗原提示状況などをin vitroで解析することに対して研究を進めていく。Pd特異的TCR遺伝子導入マウスの作製に関しては3. 「Pd特異的TCR遺伝子導入マウスを作製する」、4. 「Pd特異的TCR遺伝子導入マウスの飼育・維持を行い、研究に使用できる世代まで飼育を行う」ことを行なった。もうしばらく交配に期間を要するが、実験に使用できる世代になれば、Pd特異的TCR遺伝子導入マウスを用いて、Pdアレルギーを発症させて、アレルギー発症に伴いサイトカイン産生やT細胞の活性化の解析を行い、in vivoでより詳細な抗原提示状況を明らかにする手順で研究を進めていく予定である。具体的には通法のアレルギー発症のプロトコルに従い、アレルギー発症の程度を確認する。また発症した所属リンパ節や発症した組織を用いてサイトカイン産生や集積するT細胞のサブセットの確認、そのT細胞のサイトカイン産生量などを把握していく。またアレルギー発症後の時間的経過に伴い、集積するT細胞のサブセットの変化についても確認していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
統計ソフトや試薬の購入を検討していたが、コロナウイルス感染拡大に伴い、研究の進行中止となった。 そのため、次年度に購入予定となる。
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