申請者はパラジウム(Pd)に反応する病原性T細胞に着目し、金属アレルギーにおける抗原提示の分子機構を明らかにすることを目的とし、Pdアレルギー特異的なTCRαを用いて遺伝子導入細胞株および遺伝子導入マウスを作製することとした。またPd特異的TCR遺伝子導入マウスを構築することにより、金属高感受性マウスとして、金属材料安全性試験の確立に役立つことやin vivoでの金属アレルギー発症のメカニズムを解明できること考えている。 今年度の実績は、作製したPd特異的TCR遺伝子導入マウスを野生型マウスと同様にPdアレルギーを誘導させると腫脹が強く、明らかに野生型よりも反応が強く出ていたことを確認した。そこでTCRβ鎖を調査するためにPd特異的TCR遺伝子導入マウスにPdアレルギーを誘導させて所属リンパ節のTCRβ鎖レパートリー解析を次世代シークエンサーを用いて調査した。その結果、TRBV5 やTRBV14がWTに比べて増加することが分かり、TRBV5-01・TRBJ2-3-01、TRBV5-01・TRBJ2-5-01、TRBV14-01・TRBJ2-5-01が候補に挙がった。そこに特異的α鎖を組み合わせることによりin vivo、in vitroでの応答を調べることとした。可溶タンパクTRAV7-2-2作製し、Pd特異的TCR遺伝子導入マウスに投与してPdアレルギーの活性化状況が変化するか確認すると足の腫れは減少した。TRAV7-2-2とベータ鎖のライブラリーをT Cellラインに組み込み、in vitroでPd処理した樹状細胞株DC2.4と共培養させて、24時間後にCD69の発現状況をフローサイトメトリーで確認したところ、コントロールと比較してCD69の発現が上昇していた。このことによってTRAV7-2-02とベータ鎖の候補がアレルギー発症に重要であることを示した。
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