今年度は、骨修復におけるRunx2の寄与を一細胞単位で解析するため一細胞RNA-seq解析 (scRNA-seq)を行った。予備検討の結果、まずはRunx2野生型のCAGCre-ERTM; R26RTomatoマウスを用いた解析を行った。骨欠損作製後、骨修復部位における細胞集団を酵素処理により回収し、フィルトレーションにより単離した。10x Genomics社のChromium解析プラットホームにおいて、一細胞ごとに異なる分子バーコード含有ビーズと液滴を、マイクロ流路において反応させた。これにより、各細胞に異なる分子バーコードを付加した後、逆転写酵素によりcDNAを合成し、さらにcDNAを増幅しライブラリーを作製した。バイオアナライザーにてライブラリーのサイズと量を確認した後、次世代シーケンサーNovaseq用いた解析を行った。得られたシークエンスデータは東京大学医科学研究所スーパーコンピューターShirokaneを用いて解析した。Cell Rangerソフトウェアを用いてマウスリファレンスゲノムmm10へマッピングした後、Seuratを用いてさらなるバイオインフォマティクス解析を行った。データ正規化およびクラスタリング解析を行った後、得られた各クラスターのアノテーションを行った。さらにMonocle 3パッケージを用いて、pseudo time(偽時系列)解析により、骨格系前駆細胞から成熟骨芽細胞までのダイナミックな遺伝子発現変化を解析した。その結果、Runx2陽性の細胞集団が、骨格系前駆細胞から成熟骨芽細胞まで連続的に発現していることが確認された。現在、tdTomato遺伝子の発現解析を通した、細胞系譜解析を進めている。また、Runx2欠損マウスを用いた解析についても準備を進めている。
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