近年、咀嚼や嚥下、発語などに問題が生じるドライマウスを訴える患者は増加しており、 患者の生活の質を低下させないためにもその対策が必要になっている。ドライマウスは唾液の分泌障害が主な原因であるが、障害が起こる原因は多様であり、現在 まで有効な治療法は確立されていない。唾液腺の腺房細胞で作られた原唾液は導管部を通る過程で電解質の再吸収やタンパク 質の分泌などの成分の修飾を受け、唾液として口腔内に分泌される。唾液の分泌は自律神経 系によって調節されており、交感神経が優位に働くと、アドレナリン受容体の活性化により タンパク質の分泌が促進して粘り気の多い唾液が分泌され、逆に副交感神経が優位に働くと、ムスカリン性アセチルコリン受容体の活性化により水分泌を促進するため、サラサラな唾液が分泌される。このように、唾液のタンパク質成分と液体成分の分泌には興奮性の神経伝達 物質を介したGタンパク質共役型受容体(GPCR)のシグナリングが深く関与していることは明らかであるが、抑制性の神経伝達物質であるγ-アミノ酪酸(GABA)を介したGPCRの シグナリングについてはわかっていない。 申請者が唾液腺におけるGABAB受容体の発現を調べたところ、ラットの顎下腺、耳下腺にはともにGABAB受容体であるR1、R2ともに発現を確認した。しかし、膵臓でGABAB受容体の発現は見られなかった。ヒト唾液腺細胞株HSYにおけるGABAB受容体のサブユニットであるR1、R2受容体の発現について、免疫沈降及解析を進めたが、HSYにはGABAB受容体の発現は見られなかった。
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