研究課題
核外輸送タンパクであるexportin1=XPO1/CRM1は、がん抑制遺伝子産物を核内から核外に輸送することでそれらの機能を減弱させ、その結果としてがん細胞の増殖に寄与していると考えられている。本研究では、EXPO1阻害剤と放射線照射や抗がん薬との併用による殺細胞効果の有無や、がん細胞の増殖抑制や促進遺伝子の発現に変化を認めるか分子生物学的視点からの検討を行うことを目的としている。口腔がん細胞を用いて、殺細胞効果を検討するために細胞生存率をコロニー形成法にて比較検討を行った。放射線単独4Gy照射時で約40%、6Gy照射時では約15%であったが、EXPO1阻害剤併用で放射線4Gy照射時には約20%、6Gy照射時には約5%であり、EXPO1阻害剤併用で増感効果を認めた。また、5-FU(10μM)単独作用時とEXPO1阻害剤併用時を比較すると、5-FU単独時は80%であったがEXPO1阻害剤併用時は約60%とであり著明な増感効果が得られた。次に、Hoechst染色にてアポトーシス誘導に関して検討を行った。放射線および5-FU単独作用時と比較しEXPO1阻害剤併用時には、アポトーシスの増加を認めた。DNA 損傷量に関してH2AXのリン酸化をDNA二本鎖切断の指標として免疫染色を行ったところ、放射線および5-FU単独作用時と比較しEXPO1阻害剤併用時に著明なDNA二本鎖切断を認めた。放射線および5-FU単独作用時と比較しEXPO1阻害剤併用によりDNA二本鎖切断が増加し、効率的なアポトーシスが誘導され殺細胞効果に増感がもたらされると考えられる。
3: やや遅れている
本研究により、EXPO1阻害剤と放射線照射や抗がん薬との併用による殺細胞効果の有無や、増感メカニズムの概要に関しては明らかとなってきている。しかしながら、核外輸送タンパクの阻害によるがん細胞増殖抑制や促進に関わる遺伝子の発現に変化を認めるか否かの分子生物学的視点からの検討は現在進行中であり解明に至っていないため。
核外輸送タンパクの阻害によるがん細胞増殖抑制や促進に関わる遺伝子の発現変化に関して、ウエスタンブロットやPCRを用いて解明を進めたいと考えている。
COVID-19感染拡大の影響により、参加を予定していた国内および国際学会が中止され、ポスター作製などの準備費や旅費等に当初予定より減額が生じた。抗体などの海外からの輸入品に関しては、一部納品の見通しが立たないものもあり購入を見送らざるおえないものもあった。これらの理由により、次年度への繰越金が生じた。
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Journal of Biological Chemistry
巻: 295(37) ページ: 12946-12961
10.1074/jbc.RA120.013726
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