研究課題
MRIは一般的には筋肉や脂肪組織の検査に特に有用であり、歯や骨表面などの硬い組織については、その性質上、診断に有効性がほとんどない。そのため、これまで骨の診断は主にCTにて行われてきた。今回の研究で取り扱うUltrashort TE撮像(UTE)は歯や骨を直接的に検査できる撮像法である。この技術を用いた研究発表は数年前から増加したが、主に手足を対象としたものである。申請者は歯や骨を対象とした画像診断が歯科領域への応用を考えている。具体的には歯及び歯の発生に関わる組織及び顎骨を画像化し、診断に用いることを目指した一連の研究を行っている。その応用としては顎骨内病変に対する歯や骨の所見から、これまで診断困難であった歯の発生に関わる組織の画像化(導帯管など)、歯の異常に関する知見の発展、病気の鑑別診断、血管の走行などと同時に検査することで従来よりも安全な歯科用インプラント治療の術前検査、悪性腫瘍の進展範囲のより正確な検査等が考えられる。上記のような画像診断法を確立することを最終目標に見据えている。金属による画像の歪みや、撮像パラメータ等、その前段階となる撮像条件の検討を行ってきた。申請者はこのUTEの研究によって口腔・顎・顔面領域の疾患の鑑別、初期変化の把捉、診断能をさらに向上させることができると考える。我々はすでに口腔顎顔面領域の疾患の多くを占める顎骨のMRI画像を作成することに成功した。UTE技術は顎骨に応用してこそ最大の有用性及び新たな知見が数多く見出されるものと確信している。
3: やや遅れている
我々はこれまで口腔顎顔面領域の疾患の多くを占める顎骨からのMR信号を収集し、画像化する術を模索した。その結果口腔顎顔面部の骨及び歯を画像化することに成功している。その成果の具体例の一つとして、TE=0.096msの画像及びTE=5.6msの画像を取得し、それらから解析していくのが効率的であり、診断に有用性が高いことが分かっている。今後はこのパラメータを基本として、目的に合ったその他の撮像条件を検討していく必要がある。この研究結果により、骨ターゲットや線維組織ターゲットのMRIデータ収集が可能となることが期待される。COVID-19の蔓延により、研究協力者の確保が困難となり研究の遂行は遅延気味となっている。
前述のようにUTEの基本となる画像を作成するためのパラメータをベースとして、目的の組織に合ったパラメータを個別に作成していく。UTEによる診断基準の確立に関して、レトロスペクティブな分析として行っていく。病態の違いによる治療法、治療効果に差異が見られた場合、倫理委員会の承認を受けた上で介入研究としていく予定である。
メディア購入費、情報発信経費として誤差が生じた。COVID-19の蔓延により、研究協力者の確保が困難となり研究の遂行は遅延気味となっている。研究計画の通り、情報処理のためのソフト、デバイスの購入費として使用予定である。また、研究成果は国内外の学会発表や専門誌への投稿を通して報告し、その成果を知らせる。そのための発表経費、論文投稿及び印刷費にあてる。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (1件)
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